「ライバルは父」の続きになります。






親子夫婦















「 おぅ シカマルよぅ 」

縁側でぼーっとしていたシカマルの隣に風呂上りのシカクがどしっと音を立てて座った。
シカマルは横目でそれを確認してごろりと横になって頭の下に腕を組む。

「 あのお嬢ちゃんとあれからどうしたよ 」

シカクはニヤニヤと笑いながらシカマルの顔を覗き込む。
シカマルは口を尖らせてシカクと反対方向をごろりと向く。

「 別にどうもしねぇよ。 」

嬢ちゃんとはおそらく先日シカクの思いつきで我が家に泊まった砂のテマリのことだ。
あの時テマリが着たという自分の服を、シカマルは未だに着れずに居た。

「 …なぁ 親父 」

「 あん? 」

「 あん時なんでアイツ木の葉に居たんだ? 」

シカクはからかおうとして出した話だったが、思ったより真剣なシカマルの顔に思わず口をつむいだ。

( …全く、我が息子ながら )

鋭いというべきか、聡い子だ。
聞けば彼女は本当に”お嬢様”らしいではないか。
前風影の長女、現風影の姉。そして砂の里の上忍。


シカクの脳裏にあのときのテマリの姿が浮かぶ。
火影に会う故の礼儀か、顔の汚れはふき取られていたものの、
全身に血の匂いをまとわりつかせていた彼女はこの里にはない、異質なものを感じた。

若干16.7の少女。
けれど、少女というにはあまりにもすべてを知りすぎた、子。


シカクの顔が少し険しくなるのを見て、シカマルは同じように眉にしわを寄せる。
それを見てシカクはバンバンとシカマルの肩を叩いて、首に腕を回し、耳打ちする。


「 それよか嬢ちゃんの着た服の感触はどうだったよー? 」

ニヤニヤというシカクの言葉にシカマルはぼっと頬を染めた。
一般人からしたらほのかに、シカマルにしてみれば真っ赤といえるような反応を見せた。

( おっ、こりゃあ俺が思った以上だな )

シカクは確信していた。奪還任務のときみたあの少女に、きっと息子は惚れる。
キツイ言葉の裏に見た、彼女の優しさ。シカクは俺の息子なら絶対、惚れると思ったのだ。

実際シカマルは確実にテマリに惹かれていた。
テマリの方はまだそこまでではないが、シカマルはめんどくさがりだが一度執着したものは絶対あきらめない、そんな気がしていた。
シカマルが本気になれば、きっとテマリはシカマルに落ちる。

きっとシカマルなら


( あの子の闇を支えてやれる。 )


テマリはあの時 返り血を全身に浴びながらも、自身に傷はなかった。
それにもかかわらず、ひどい 顔をしていた。
痛そうだった。何が、とも言わないが。

けれど、「始末は済ませた」という言葉に迷いはなく、当然のように言ってのけた。
いや、彼女の中では…砂では、当然のことなのだろう。

けれど、彼女は知られたくないと思っている。

彼女の人生の中では当然の、人の命を奪うという行為。
砂の中では一般的な、任務のための殺人という行為。

それでも、彼女はどこかで
自分は汚れている と、思ったのだろう。

だからシカクの申し出を受けたのだ。


知られたくないと、思っていたのだ。
この木の葉でであったシカマル達に。

砂の人間はこうなのだとわかってはいても
血だらけの自分は、今も、今までも人を殺し続けているのだと
知られたくなかったのかもしれない。

自分でも気づかないうちにきっと


「 親父? 」


シカクはシカマルの首を思いっきり絞めて、立ち上がっていった。
シカマルはあまりの力に多少むせていたが、シカクはそんなことは無視した。


「 シカマルよぅ 」



『 シカク殿 』



「 おめぇ 」



『 この服は、シカマルには悪いが、処分してシカマルが着れないようにしてはくれないだろうか 』



「 惚れた女の笑顔くらい 」



『 …風呂上りといっても人を殺めた私が、人の血を存分に浴びてきた私が着てしまった。 』



「 めんどくさがんねぇで 」



『 …穢してしまった。だから、シカマルには 』



「 守ってやれるよなぁ? 」



『 着て欲しくないんだ。 』


あんなふうな切ない笑顔のままにしとくわけ、ないよな?


いつものような笑い顔だ。
けれど、その笑顔の裏に見た、いつにないシカクの真剣さにシカマルは一瞬動きを止めた。
すぐに唇の端を片方だけクッとあげて、彼特有の笑い方を見せる。



「 めんどくせーけどな 」



めんどくさいとはいったもののシカマルのその顔は確実にYESの返事。
惚れている、という部分に否定もしなかった。
息子の返事に満足したのか、シカクは、くっとシカマルに似た笑いを浮かべる。



「 それでこそ、俺の息子だ。 」



男になれよ、シカマル。



「 ちょっとシカマルー!!! 」



どたばたと縁側に直接上がってきたいのにシカマルはとたんにいつもの下唇を出した顔になる。
シカクはそれをみてくくっと笑う。
おめぇ、わかってっか?嬢ちゃんの話してるときとの顔の違い。



「 テマリさん、いま木の葉に着てるんだってー!! 」


いのの言葉に反応したシカマルをみて、シカクは嬉しそうに台所へ戻っていく。
そこではヨシノがスイカを切り分けていた。


「 シカマルーすいかは? 」

「 わりぃ、母ちゃん 後で! 」

どたばたと出て行くシカマルを、ヨシノはもう、といった顔で見ていたが、シカクはくくくっと笑い続けている。


「 なんならテマリちゃんの分もあるからねー 」


ヨシノの付け足した言葉にシカマルがこけそうになる。
隣で笑っていたシカクもヨシノをふりかえった。
いのの声は確かに大きかったが台所で水仕事をしていたヨシノに聞こえるほどのものではなかったはずだ。


「 …なんで 」

「 あんたがそんなにあわてんの、テマリちゃんが来てるときくらいでしょ 」


ヨシノの言葉にシカマルは少し顔を赤くして「めんどくせー」といいながら家を飛び出していった。
シカクはスイカをひときれ持ち上げて、塩をふる。

スイカの味の中に塩の特有の甘さが、なんともいえない。


「 アイツはやっぱり俺の子だよ 」

「 ふふっ、そうね 」




後日。
テマリが着用した服を、普通に着ているシカマルをみてテマリはひどく驚いた。

「 おまっ…馬鹿、その服は着るな!! 」

「 いってぇ; 何だよ、いいだろ俺の服なんだからよ 」

「 しかしそれは… 」

「 あんたが一回着た服。それ以上でも、以下でもねぇよ。 」

「 …だから、私が着たからこそ、 」

「 …捨てられないんだろうがよ。 」

顔を真っ赤にするシカマルをみて嬉しそうに笑ったテマリを、シカクは本当にヨシノとよく似ていると思ったらしい。

強さの裏に隠したその笑顔を
もっと引き出したいと思ったその時点で、

お前は俺の子だよ。













































テマリのいないシカテマ。シカクさん好きです。

2006.8.28