傷ついても   四














「 は… 」

現場の状態は思ったよりひどかった。
規模自体はそれほどではないものの、崩れたと聞いていた廃墟は完全に土砂に埋もれてしまっている。
これでは中の酸素が尽きる。完全に生き埋め状態になってしまう。
先日までの雨で湿った土砂はぴったりと隙間を密着させて、重みを増している。

「 シカマルっ こっち!! 」

一周ぐるりと状態を確認し終えた頃ようやく到着したいのに呼ばれた。
サクラがつれてきた少年が土砂を指差す。

「 ここからでてきたはずだって、この子が… 」

指差した場所には子供が出られるほどの隙間はなかった。徐々に土砂が崩れて埋もれてきているということがありありとわかる。

「 確かにここなんだな? 」

「 うん、間違いない。 」

少年はいつの間にか泣き止んで、力強い目をしていた。その目は確かに、テマリを助けたいと思っていることがわかる。

 どうするの?
 とにかくあいつがどのあたりにいるのかを把握しなけりゃ何にもなんねぇ。
 怪我の状態も気になるわ。中の酸素が薄いからココから結界をはって、酸素を確保しなくちゃ。
 ああ、頼む。サクラ。

やっと落ち着きを取り戻してきたのか、シカマルはてきぱきと状況を把握して周りに支持を出す。

 二次災害を防ぎたい。チョウジ、いつでも倍化の術が出来るように待機しててくれ。
 わかった。
 いのは人を近づけるな。それからネジかヒナタは今里にいるか?
 確かヒナタは今日任務なかったはずよ。呼んで来るわ!
 頼む。

「 お兄ちゃん。 」

全員が持ち場に着いたところで、ラエンが口を開いた。こぶしをぎゅっと握って胸の前にかざしている。

「 ボクは? 」

シカマルの目をじっと見つめる。シカマルはラエンの前にしゃがんで、肩に手を置いた。

「 お前はここでアイツを待ってろ。 」

「 でも…! 」

「 それで、ちゃんとアイツと向き合え 」

「 ! 」

シカマルにそういわれて、静かにうなづくのを見届けると、シカマルはさてと、と手を頭の後ろにやりながら立ち上がった。

感じる。かすかに、だけど 確実に、間違うはずもないあいつのチャクラ。
だからこそ、わかる。危険な状態だってこと。あまりにも弱弱しいそのチャクラは今にも消えてしまいそうなくらいだ。
頼む、たのむから
もう少し耐えてくれ。




「 …う… 」

うっすら回復してきた意識と同時に腹の激痛を感じて一度開きかけた目を再び閉じる。
なんだか呼吸が楽になった気がする。どういうことだ?
人の気配がする…これは
サクラの術式?この土砂全体を囲っているのか?なんて無茶を、チャクラの消費が激しすぎる。
チョウジもいるな。万全の体制ってかんじだ。はりつめたチャクラ。
それから遠くからかけてくるイノと日向ヒナタのチャクラ。相当焦っている。
逃がしたはずのラエン。それから、それから
一番、会いたかったあいつの、
意識を失う時、最後に想ったあいつの、シカマルの、チャクラ。

「 テマリっ!!! 」

ラエンを逃がした穴あたりからシカマルの声がする。珍しく、私の名前をちゃんと呼ぶ、シカマルの声が。
ああ、なんだかすごく懐かしい。安心する。力が抜ける。
あいつの声はこんなにも切羽詰っているというのに、あいつがそこにいるというだけですごく、すとん、と落ち着く。このまま、眠ってしまいたいくらいに。

「 テマリ!どこだ!返事しろ! 」

穴の下辺りにテマリがいることをヒナタが確認するや否や、シカマルは穴にむかって叫びだした。その声は穴の中で反響して幾重にも渡るが、それ以外響く音は何一つない。

「 し、シカマル君、無理だよ!ひどい傷…! 」

「 ヒナタ、テマリさんの状態を詳しく教えて 」

「 い、岩に足を挟まれてる…うつ伏せで…右のわき腹にクナイが… 」

「 ! 」

ラエンが目を見開く。やっぱり、ボクのクナイ!!

「 ひ、ひどい出血… 」

ヒナタが思わず口を覆う。それほどまでに危険な状態なのか。

「 チョウジ、はやくっ 」

いのがチョウジを促すと、チョウジは土砂を退けようとするが、シカマルがそれをとめた。

「 ヒナタ、あいつの上にのってる岩の周りをよく観察してくれ。 」

「 うん……あ、ダメ!急に動かしたら土砂が全部崩れちゃう…! 」

「 え? 」

「 テマリさんの上に乗ってる岩が全部の土砂の重心になってるの…
  少しずつどかさないと確実にまた崩れる! 」

「 でもそんなことしてる時間はないわよ! 」

「 チョウジ、とりあえずこの穴広げて支えててくれ。俺とサクラが入れるくらい。 」

「 …わかった! 」

チョウジが倍化の術で巨大化した腕で穴の周りの岩を慎重に崩す。人一人分あいたところで、シカマルは

「 お前らはココでしばらく待機しててくれ。サクラ。 」

「 うん 」

穴に入っていくシカマルの後を追って、サクラも続く。中は想像以上に暗くて、ホコリっぽく、呼吸が辛い。
湿っぽい空気が体力を奪うようだ。ざっと抜けるとしゃがめば動けるくらいの空間にでた。
その先ではヒナタのいうようにうつぶせで倒れたテマリがいた。

「 テマリっ!! 」

「 テマリさん!! 」


テマリの姿を見た瞬間、俺の頭から一気に熱という熱がすり抜けて落ちたような感覚に陥った。
一瞬めまいがするくらい、テマリの姿は悲惨だった。

「 シ、かまる…? 」

「 いいから、しゃべるな 」

「 すぐ止血を…! ひどい…!! 」

未だに流れ出ているテマリの腹部に腕をなんとか伸ばして止血をしようとするが、傷口が下を向いてしまっていて直接患部の様子がわからない。テマリの顔は生きているのが不思議だと思うくらい、ホコリをかぶっているだけなんかじゃなく、土気色だった。人間の顔がここまで色を失うものなのか。

「 シカ、マ ル… 」

「 テマリ…いいから、俺の手握ってろ。 」

いつもポーカーフェイスのシカマルの顔がクシャリとゆがんで、あまりにも辛そうなのに、サクラはひどく驚いて、余計に手に力がこもる。助けたい、この人を、絶対。

「 …なんて 顔、してんだ、泣き虫くん… 」

「 いいからッ…しゃべるなって…!! 」

シカマルがそう叫ぶのとほぼ同時に、テマリは少しだけ笑って再び意識を飛ばした。

「 テマリ…!! 」

テマリの手を握るシカマルの手に力がこもる。普段の腕ならきっと血がとまって真っ赤になるくらい強く握るのに、冷たいテマリの手は色も変えずにくにゃりとゆがむ。

チャクラが、消えて、いく。

俺が刺されたんじゃないかって、胸に衝撃が走った。サクラが汗だくになってる姿も目に入らなかった。

「 シカマルっ!! 」

そのとき、急にあたりが明るくなって、イノの声がして、チョウジといのとヒナタと、んで赤丸が見えた。
見上げると、赤丸の頭からキバが顔を出して、ニッと笑った。

「 しっかりテマリ姉ちゃん庇えよ!!! 」

いうなりキバとチョウジはテマリの上の岩をどかしにかかる。
岩を動かす動きと同時に土砂がばらばらと崩れて、岩やら泥やらが頭に、顔に、足に、かかる。
それでもテマリの顔の上に四つんばいになったシカマルも、治療を続けるサクラも、テマリを庇うように立っている赤丸も、いのもヒナタも、動こうとはしなかった。

がたたた!!!!

大きな音と一緒にテマリの足があらわれた。その足もかなり出血してはいたが、廃墟の木材によって生まれた隙間のために、つぶれておらず、足自体はそれほど心配のない状態だった。
すぐに赤丸が土砂ごと立ち上がり、自分の上にのせたままの土砂を、テマリにかからないように捨てる。
サクラはくるりとテマリの体を反転させた。
思わずその場にいた全員が口をつむぐような傷が、テマリの右腹に刻まれていた。
根元まで深くささったクナイは、とてもじゃないが容易に抜けるものではなかった。
サクラは傷口をふさぎながらゆっくりとクナイを慎重に抜いていく。
シカマルはぎゅっとテマリの手を握るしかなかった。


































…まだ続きます;。多分次で終わります。3ヶ月近く放置しててすみません;

2007.02.09