傷ついても 参
かけてきたいのとシカマルを迎えたのは土砂崩れのあたりに住む住人だった。
そこは土砂が崩れたところよりも、中心街に近い街道。
「 あっ!あの子よ、シカマル 」
大人たちに囲まれて、右手を消毒してもらっている少年をイノが指差す。
シカマルはそのまま、少年に近づいた。
「 お前か?土砂に巻き込まれた、ってガキは 」
シカマルは少年のそばにしゃがみこんで、右手を消毒する女性をあごで離れるよう指示する。
少年はあいまいにうなづいた。
「 本当に、中に人はいなかったんだな? 」
ちらりと少年の両手を確認してから、上目遣いで少年の目を睨むようにして問う。
消毒中の右手。
あれはなれてない奴がチャクラを無駄に放出したときにできる傷だ。
俺も幼い頃よくやった。だから、わかる。
おかしいのだ、左手にべったりとつく、乾いた大量の血液が。
みたところ少年はそんな大きな怪我をしていない。
う、うん。とシカマルから目をそらして、やはりあいまいにうなづく。
左下へと泳ぐ目と、体ごと横へずれた少年の、ズボン後ろについた忍具入れを
シカマルは見逃さない。
「 おまえ、クナイはどうした 」
そういって、シカマルは少年の忍具入れをズボンから取り上げる。
あれはアカデミー入学時にもらえる忍具入れだ。
確かクナイが5本、手裏剣が10個入る子供用の小さめのもの。
土砂にまきこまれて落としたならもっとおおきくフタがあいているはずだ。
しかし、フタのボタンはしっかりついたままで、横から無理にひっぱりだしたかのように口がゆがんでいる。
そう、まるで戦闘時に後ろ手に出したかのように。
そのうえ、倒れた反動で落ちるのなら、ジャラジャラとクナイよりも小さな手裏剣の方が多くこぼれるはず。
残っているのはクナイ3本と、手裏剣10個。
「 …2本、足りないぞ 」
チャクラで傷ついたであろう腕をみながらシカマルがそういうと、少年はあわてて手を隠した。
「 …もう一度だけ、訊く。 」
シカマルはゆっくりと立ち上がって、静かに、言う。
少年はそのシカマルの声にひそかに含まれた怒気に息を呑む。
後ろにいたいのがごくりと生唾を飲み込むほど、そのシカマルは静かで、怖かった。
「 本当に、中に人はいなかったんだな? 」
少年は一度ぎゅっと目をつぶる。
そして、大きく口を開きかけた。
「 あの…っ 」
「 見てませんよ。 」
そばにいた老人が口を開く。
少年もシカマルも、周りの人間の視線も、老人へと集中される。
「 …じいちゃん… 」
少年がちいさくいうと、老人は少年の背中を押した。
「 ラエン、ほらもう帰るぞ。 」
少年はあ、とかでも、とかいいながら老人に押されていく。
シカマルが腰に手をあててはぁーとため息をつく。
そして、めんどくせーと一言言ってから また歩き出した。
「 ちょっとシカマルどこいくのよ 」
「 どこ、って土砂崩れの現場だよ。確認しとかなきゃなんねぇだろ 」
「 だっ…だめ…!! 」
いのに答えたシカマルの言葉に、思わず少年は叫んでいた。
あわてて口をふさぐも、シカマルはくるりとこちらをむいている。
「 なんで? 」
「 あ、…危ないよ 」
「 なにが 」
「 だって…その、 」
少年がもじもじと言葉を選んでいる間に、シカマルはまた歩き出した。
少年はあわてて叫ぶ。
「 離れてろって言われたから…!! 」
「 …誰に 」
冷静を装えているだろうか。「言われた」という言葉に反応した俺の心臓は、
心なし、でも確実に、さっきより音を強くしている。
「 土砂を、飛ばすからって… 」
少年が目をそらす。
「飛ばす」という単語にまた俺の心臓は音を早くする。
右手が、額宛を強く握るのがわかる。小さく出したつもりの声が、いやに、大きく、響いた。
「 …中に、人がいるんだな? 」
「 …うん 」
今度は一度 ドクン、とおおきく脈打つ。顔が、頭が緊張であつくなる。
全身から湧き上がるかのような汗が、確実に、俺をあせらせる。
少年は胸の前にやった手をぎゅっと強く握った。
「 何人だ 」
「 一人…砂の、お姉ちゃんが 」
その言葉はまるで俺の耳を突き破るかのような強い響きを持っていた。
落ち着け、おちつけ。という自己暗示もままならないほど、すぅっと引いていく額の熱。
さっきの熱はどこへいったのかとおもうくらい、俺の頭や顔は冷たくなって、
膝が、びっくりするくらい、震えた。
今までにないくらい、怖くなった。
「 シカマルッ!! 」
そこへ綱手様に言われたのであろう、サクラが到着した。
後ろにはチョウジもつれている。いのは心配そうにシカマルの顔を覗き込んでいた。
「 だ、大丈夫よー…もし、それがテマリさんなら、本当に土砂を吹き飛ばして出てくるって!
だから巻き添え食らわないようにもう少し様子見ましょうよー 」
確かに、そうなんだ。
今砂の者で里にいるのはテマリだけのはずだから、
もし巻き込まれていてもテマリなら大丈夫のはずなんだ。
だけど、なんだ、この
恐怖。
なんか、今まで感じたことないくらい、いやな、予感。
サクラがいつにないシカマルの雰囲気に、距離をおいて立ち止まる。
シカマルは、何も言わない。
「 あの… 」
反応がなくなったシカマルに、まだ言い足りない言葉を少年は続けた。
「 砂の、お姉ちゃん… 」
その言葉にピクリとシカマルが反応する。それと同時に少年はびくっとおびえる。
怒られるかも、しれない。これを言ったら本当に。
でも、言わなきゃ
「 怪我、してるかもしれない…んだ。 」
全員が硬直するのがわかる。シカマルは本当に、動かない。
呼吸すらも忘れているかのように、動かない。
「 僕の握ってたクナイが…なくなってて、それで
僕の手が…血だらけになって、て… 」
いう途中で少年は泣き出した。泣き声が響いて、イノが俺を叫ぶように呼ぶ声がした。
それでも、シカマルは動かない。
怖い怖い怖い怖い怖い
早く、向かわなくてはいけない。
早くいかなければ間に合わなく、なるかもしれない。
だけど、もし
もしも、
手遅れだったと したら
行き着いた先に
冷たくなったアイツを
見つけてしまったと、したら?
それを考えるとシカマルは動きが取れなくなった。
足がまるで地面につかまれているかのように動かなくて、膝は震えて立っているのがやっとで、
横でいのが何か言ってても、サクラが少年に怪我の状態を聞いていても、
ただ、何もできなくて
「 シカマル 」
チョウジの声と、はたかれた頬の痛みで、我に帰る。
彼に帰ったととたん、硬直していた体が動きを取り戻して、膝の震えに耐え切れなくて思わず俺はしゃがみこむ。忘れていた呼吸を復活させて、大量に酸素をとりこむ。
一気に脳が覚醒していく。同時に、目が見開いていく。
少年に話を聞いていたサクラも、走り出そうとしていたいのも、周りの人も、
シカマルも驚いてチョウジを見た。
「 失いたくないもの。 見つけたっていってたでしょ…? 」
チョウジの言葉にシカマルの目が色を取り戻した。
シカマルは何もいわず、走りだす。チョウジもいのもその後を追って、
サクラは少年の手を引いてさらにあとへ続く。
いつもめんどくせーっていってるシカマルからは想像のつかないくらいのスピードで、
シカマルは走った。
さっきまで震えていた膝が嘘みたいだ。
いや、実際今でも震えているのだが。
恐怖でもつれそうにがくがくとする足は、もつれる暇もないほど筋肉が切れるんじゃないかってほど、
意思から離れたかのように動く。
もう意識して走ってるのか、無意識なのか、何を考えているのか、どこへむかっているのかも
わからないくらいに必死になって
でも ただ
無事で、あってくれ…
テマリ―
…まだ続きます。長く放置しててすみません;
2006.11.26 ![]()
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