傷ついても 弐
しばらく気を失っていたのだろうか、目が覚めると、ホコリくさくて暗くて前が全く見えなかった。
感じたのは、自分の下に組み敷いた少年の心音。
( …よかった )
と、同時に右足に強烈な痛みが走る。
はさまれている。しかも、これは木ではなくて、廃墟の裏の山から崩れてきた岩だ。
どうりで、建物の崩れるスピードが速いと思った。
爆発によって、裏の山が土砂崩れをおこしたのだ。
幸い、小さな裏山ではあるし、土砂崩れの規模も小さく、廃墟の木がうまい具合に空間をつくって
テマリたちを生き埋めから助けたのだった。
テマリはそのまままわりを見渡した。
目が慣れてきた頃、ほんのわずかだが、上のほうに外の光が見えた。
同時に外の大人の話し声もする。
ちいさなちいさな隙間ではあったが、おそらく子供一人ならなんとか通れそうだ。
「 おい 」
少年はテマリの声に反応して目を覚まし、急いでテマリから離れた。
そして、気づく。少年の手は血で真っ赤だった。
「 チャクラの放出になれてないんだろう。いきなり大技をつかうからだ。 」
確かに、少年は自分の腕に痛みを感じた。
だけど、こんなに大量の血がでるほどでも、ない。
「 あ… 」
少年が何か言いかけると、テマリはふっと笑う。
「 …お前、名をなんと言う。 」
「 あ、ラエン… 」
「 ラエン、あの術は誰に教わったんだ 」
「 …父ちゃんに 」
「 …そうか 」
黙りこくったテマリを見つめる。テマリはゆっくりと顔と口をあけた。
「 私の、父も殺された。 」
「 ! 」
「 私の父は私に術など授けてはくれなかった。 」
「 … 」
「 …お前の父はいい父親だな。 」
そこで、初めてテマリは少年に笑いかけた。
少年は先ほどまでのテマリの様子からは信じられないその優しい顔にひどく驚く。
「 うん。 」
「 お前は、私の弟に似ている。 」
「 弟? 」
自分をとりかこむすべてに 憎しみの目を向けた、愛を刻む前の 弟。
自分を保つために 心のよりどころを殺人に求めた、愛を刻んだ 弟。
お前は復讐にこころのよりどころを求めているだろう?
お前の目に、あの時の、我愛羅の、闇がかさなる。
「 …すまなかった。 」
テマリは四つんばいが少し崩れたようなの体制のまま、頭を下げる。
少年に謝る声に、
我愛羅への想いも、こめて。
すまない。
その翡翠の瞳はいつもの強さを宿してはいなかった。
少年が近づいてテマリに触れようとすると、テマリは翡翠の色を強くする。
頭を上げて、少年にあごで指し示す。
「 あの穴から外へでろ。お前ならとおれる。 」
「 …お姉ちゃんは…? 」
自分の心配をしてくれたことにテマリは少し驚いたが、少年に笑いかける。
変われるんだ、人は。
お前も、変われるんだ。
我愛羅を変えた、うずまきナルトのように。
私を変えた、…あいつの、ように。
お前を変える、人になりたい。
「 私はお前が出たあと、術でこのあたりの土砂を吹き飛ばす。
だから、外の人間にココをすぐ離れるように言ってくれ。
巻き添えをくらってしまうからな。 」
テマリはニッと笑うと背中の扇子を視線で示す。少年はそれでも心配そうな色を消さない。
「 だけど… 」
「 いいか、ラエン。中に人はいないと言え。 」
「 え、でも… 」
「 いいな。 」
有無をいわせぬテマリの口調と強い視線に、おもわずうなづく。
テマリはまた安心させるように笑った。
「 行け。 」
ラエンは上っていった。
しばらくするとでられたのか、外で人が騒ぐ声がして、だんだん気配が遠ざかっていった。
それと同時に、テマリの顔に一度安堵の顔が浮かんで、それから徐々に余裕が消えていく。
汗が吹き出る。
「 くっ・・・ 」
岩にはさまれた右足より、ヤバイ。
ラエンが握っていたクナイが、右のわき腹に深く刺さっているのだ。
もう大分出血している。
おそらくラエンにおおいかぶさったときだろう。
人の気配が消えると同時に、テマリの意識も徐々に遠のいていく。
ヤバイな。本気で無理かもしれない。
扇子で土砂を吹き飛ばすなんてはなから考えていなかった。
いや、無理だった。
テマリの上にのっている木は相当な重さであるし、おそらく足のうえにのっている岩は上にかさなる岩の重心になっている。
足はうまいこと隙に挟まるような形で入っているため、つぶれてはいない。
痛みを感じるということは、まだつながってはいる。
つまり、岩を動かせばすべてが崩れる。
しかし、岩を動かさなければ足は動かない。
何よりも、
( 血を、流しすぎた。 )
こんなことなら
今日も
いつものように
( あの アホ面を待つんだった…。 )
ふっと口元に笑みをうかべる。
今日はよく笑う日だ。自分で 珍しいな、なんて。そう 思った。
それを最後にテマリは意識を手放した。
「 何?土砂崩れ? 」
そのころシカマルは火影室にいき、テマリは帰ったといわれ、ちょうど戻ろうとしていたところだった。大げさに走ってきたいのが、火影の部屋の扉を乱雑にあけ、土砂崩れがあったと報告をしたのだ。
「 それで、被害は? 」
「 子供がまきこまれたようですが、ほとんど無傷で…ひとりででてきました。
他に人はいなかったと子供も周りで見ていた人も証言してます。 」
「 そうか、それはよかった。 」
「 ただ… 」
「 ただ? 」
「 …これが 」
いのが差し出したのは、額宛。
砂の、額宛。
「 …まさか 」
「 …火影様、テマリに教えたのってどの道ですか 」
あたりの空気がいっきに硬直する。ただはなしを聞いていただけだったシカマルが重く口を開く。
「 …門までの最短の道だが 」
「 …いの、その土砂崩れ 」
「 門に一番…近いわき道よ 」
シカマルはそれをきくなりきびすを返して、走り出した。
「 シカマル?! 」
いのは火影に一礼してあわてて後を追う。
「 サクラ!! 」
綱手はすぐにサクラをよんでシカマルといのの後を追わせた。
土砂崩れの現場に。
まさか、と
そんなわけがない、と
でも、と
頭の中で交差する考えは結局ひとつにしかたどり着かない。
頼む、俺の気のせいであってくれ…!!
まだ続きます。…私のシカマルはよく走るなぁ…。
2006.9.21 ![]()
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