君という命が、誰かの心を救うんだ。
君がいてくれたすべて
まるで嘘みたいに空は晴れていた。
数ヵ月前から続いている戦なんて、気にもとめないかのように
雲はゆっくりとながれていた。
「 あー… 」
めんどくせぇ。
お決まりの口癖さえもまともに漏らすことのできない空気の中で、無線に響く声を聞きながら地図とにらめっこを続けている。ここ数日ずっとこんな感じだ。
「 シカマル、交代だって 」
バタンと個室の扉をあけて入ってきたいのが、珍しく静かに言った。
へぃ、と短く返事をして立ち上がる。すれちがいざまに欠伸をすると、
「策士サマも大変ねー」なんてからかわれて、「めんどくせぇ」と、口癖を今日初めて声に出す。
この戦が始まる二ヶ月ほど前から作戦指揮官にまわされ、基本的に里内から外のやつらへ作戦をまわす立場になった。もちろんたまには直接外部任務にたずさわることもあるのだが、頭をつかうことがメインになって、いつの間にやら「影の策士」だなんてこそこそ言われるようになったらしい。
まぁ、外へかりだされないのは正直それだけとは思えない。火影が何かを含んで考えているんだろうことも、わかっている。助かるといえば、助かる。外にでなければ、はちあうこともない。きっと前線きっているに違いない。アイツとやりあうのだけはめんどくせぇから二度としたくない。
俺に負けず劣らず頭がきれると評判のアイツは、この戦の要注意ランクに指定されているのだ。はちあわせたら、殺せ。無理なら待避。それが、アイツの注意ランク。間違ってもはちあわせだけは勘弁願う。
「砂の風姫」だけは。
***
冷たい風が吹いた。日差しのわりには指先を冷やすほどの冷たい風が。
木々がざわざわと、このあと訪れるだろう嵐を予感させる。
「 テマリ様、準備整いました。 」
「 …よし。予定通りいく。いいな。 」
「 はい。 」
無機質に無線から響く声が、まるでこの胸騒ぎを助長するかのように鼓膜へと触れる。
里を出る前にみた、里を守る弟の姿を思い出して、自然と笑みが浮かんだ。
いきがけにもうひとりの弟から「無理はするな」ともらった兵糧丸を奥歯でつぶして、左足の切傷をかたく布で縛る。きゅ、という絹ずれの音とともにずきん、と痛みが広がって、意識がはっきり覚醒してきた。今から行う作戦は現実なのだと、急につきつけられたような気分になって少し不安が胸をかする。背中のセンスを強く握る。私に手裏剣もクナイも必要ない。相棒はこいつだけ。こいつさえいれば大丈夫。
さっきよりも傾いた太陽が私の指先を陽にさらして、影を意識させた。嫌な時に思い出させる。
さっき感じた不安は、戦いに関してじゃない。
いざ、奴を目の前にして、自分が動揺しないかという、甘っちょろい危惧だ。
あのアホ面の、けれども頭のきれる影の使い手が私の作戦通りに動いてくれるとは思わない。
…けれども、きっと奴は私の思っている通りに行動するだろう。
優しすぎる性格が、きっと仇になる。その為の伏線も、はった。
そう思いながらもどこかで何かを期待する自分を感じて、自嘲気味に笑ってから、私は駆け出した。
喉も裂けよと張りあげた声も
( 胸のうちでは、鳴り響くのに )
私の中での、シカ.テマ集大成。
2009.6![]()