本日も晴天なり。   後編

















 違う。


 違うよ。


 私は


 こんなことをしたかったんじゃ、ないのに。







火影室から出てきた二人をつけてて、聞いてしまった。見てしまった。知ってしまった。

シカマルはテマリさんのこと好きだ。

テマリさんはシカマルのこと好きだ。

違う、知ったんじゃない。

確信した、んだ。

私は知ってたはずなのに。






「 シカマル 」

私は気づかずに通り過ぎようとするシカマルにおそるおそる声をかけた。
きっとシカマルなら何もなかったように隠そうとするんだ。
「何してんだ、いの」ってめんどくさそうな顔で、言うんだ。
いつも絶対人に感情の乱れを見せないようにしてるから。

そうしたら私も、いつもみたく背中でも叩いて、「あんたこそ何してんのよー」って、いつも見たく…


「 …いの …悪い。 」


シカマルはそれだけ言うと軽く片手を上げて近寄ろうとする私を制して、そのまま行ってしまった。

何よ、そんなの シカマルらしく、ないよ。
いつものアンタはどうしたの?ちょっと位辛いことがあっても平気なふりしてたじゃない。

…それもできないくらい、なの?


ズキンと痛む胸が、一体なんで痛んでるのかわからなかった。

シカマルがテマリさんを好きなんだってはっきりしたから?
シカマルがあんなに落ち込んでるから?
テマリさんも苦しんでるってわかってるから?
…私がこの状態をつくりだしたから?


「 いの 」


シカマルをみつめたまま立ちふしていると、そばからチョウジの声がした。


「 チョウジ… 」


チョウジの顔を見たらなんだか急に涙があふれてきた。どうしよう、どうしよう。
私、なんてことをしたんだろう。
今更そんな思いにかられた。


「 私、どうしたら… 」

「 いのは、僕が言わなくてもわかってるはずだよ。 」


その言葉にチョウジの胸に当てていた顔をあげると、チョウジはいつもの笑顔でニッと笑った。


「 何年一緒に居ると思ってんの?でしょ? 」


ああ、そう。
本当にあんたってすごいわ。


「 …変わらないよ、シカマルの隣は僕だったりいのだったり。だけど、テマリさんは特別席なんだ。

  シカマルが、初めて自分から加えた席なんだよ。テマリさんの席は。 」


チョウジから離れて、私は力いっぱい涙をふいた。ぐいって音がするくらい。
そして神経を研ぎ澄ます。テマリさんのチャクラを手繰る。まだ、そう離れていない。

そのことに安心して、シカマルとテマリさんどちらの方に行こうか迷うと、チョウジが笑った。


「 シカマルは、まかせて 」

ああ、なんで私の考えてることわかるのかしら。チョウジ、ほんと

「 最高ね、アンタは 」

チョウジはへへっと笑ってシカマルの元へ歩き出す。私も方向転換してテマリさん目指して走る。










わかってたのよ。

多分、中忍試験のときから。女の勘ってやつよ。

違うの、私は別にシカマルが好きってワケじゃなくて。

もちろん、LIKEとしては好きよ?でも多分LOVEなんかじゃないのよ。

テマリさんと一緒に居るようになってからのシカマルは、急いで大人になろうとしてるみたいで、

急に大人になってくみたいで、

寂しかったの。

一人先に中忍になったアンタは

昔から大人びてたけど、違うのよ。

私の知らないうちに、大人になっていくの。

私の知らないうちに、テマリさんの席が増えてたのよ。

…何年一緒に居ると思ってんのよ。

私にだって相談して欲しかった。

チョウジには話してたじゃない。テマリさんのことも、中忍になってからの不安とか焦りとか、任務のこととか。

奪還任務の時だって、チョウジは連れて行ったじゃない。

テマリさんには泣き顔だって見せたじゃない。

私の前ではいつも大人の振りしてるくせに。

…寂しかったのよ。 私だけ、おいていかれてるみたいで。

私だけ、仲間はずれみたいで。

テマリさんと一緒にいるときの、あの顔を私にも見せて欲しかったの。

私の知らないシカマルを見るのが嫌だった の。

ああ、私ってなんでこんなに子供なのかしら。







「 テマリさん!! 」

2mほど後ろに降り立ったいのを、テマリはふりかえらずに立ち止まって迎える。


「 なんだ 」

「 あの、まず謝ります。術のこと…ごめんなさい。 」

「 何のことだ。 」

「 わざとかかってくれたんでしょう…? 」

返ってきた声があまりにも普段どおりの声だったことに、折角意気込んでた気持ちが揺らぐ。
テマリさんの強い、声色。声はいつもと、変わらない。
違うのは、テマリさんの強い目が見えないこと。

「 …ちょうど、私も考えていたところだった。だからきっかけに使わせてもらった。それだけだ。 」

「 …じゃあどうして? 」

私の問いかけにテマリさんがピクリと反応する。私はそれを逃さず、また気持ちを強く持つ。
いの、負けるな。

「 どうしてそんな 」

テマリさんの前に飛ぶ。テマリさんがびくりとしたけど、もう遅い。
普段のテマリさんならこんなことありえない。こんな簡単に驚いたりする人じゃない。
こんな簡単に前をとられたりする人じゃない。


「 泣きそうな顔してるんですか? 」


正面から見たテマリさんの顔は、今泣いたばかりの私よりよっぽど辛そうな、
いや、泣けないからこそ、辛そうな
女の人の顔だった。


「 …すまない。 」


テマリさんは頭をふせた。どうして?なんでテマリさんが謝るの?謝らなくちゃいけないのは私なのに。


「 わかってるんだ。…シカマルだって、いのみたいないつでもそばにいれる、可愛い子と居た方が幸せになれるんだって。

  でも、わかってるんだ。自分がこんなにもシカマルに惹かれていることも。

  だけど、どうしようもないんだ。私の気持ちは後にも先にも引けない。

  だから、シカマルから離れるように仕向けた。 」


「 どうして?!シカマルだってあなたが好きなのよ?!

  私のほうがイイ訳なんかないじゃない!好きならそんなの… 」


「 いの 」


視界に、テマリさんの後ろにシカマルとチョウジがうつる。

きっとテマリさんも気づいてる。
二人にも聞こえるほどの距離になってから、テマリさんは一度目を閉じて、再び開く。

いつものテマリさんの、強い目。


「 お前は木の葉の忍だ。シカマルも、木の葉の忍だ。

  しかし 」

一呼吸おいて、テマリさんは決意の色を見せる。
シカマルが後ろで息を呑んだ。



「 私は


  砂の、忍だ。 」



テマリさんの、すべての意味を含んだその言葉に合わせて、強い乾いた風が、砂を交えて吹く。
ざぁっという音を立てて、ふく。


「 …いつ同盟が切れるかわからない、いつ戦争になるかわからない、他里の忍だ。 」


テマリさんはそういうと切なげに、口に笑みをのせた。
その顔が私の胸にささって、私はなみだをこぼす。

泣きたいのは、テマリさんなのに。

テマリさんの涙は私の目から流れてく。
泣き出した私の頭と肩を優しく抱いて、テマリさんは続ける。



「 私も、あいつも、里を捨てるなんてことはできない。

  もしそんなヤツなら…あいつに惚れたりしないさ。 」



その言葉にシカマルは大きく目を開く。テマリさんは少しだけ顔を横に向けて、シカマルにも顔が少し見えるようにした。



「 お互いが、これ以上傷つかないために。

  …これ以上、戻れなくなる前に

  手遅れになる前に

  私はお前に別れを告げる。 」



いのに向かって話していた言葉は、そのままシカマルに向けられた。テマリはいのをすっとはなして頭をなでた。


「 いの、本当にお前はイイ子だな。 」


テマリさんは大人びた顔でそういって、また歩き出した。
私は止めようにものどがしゃくりあげてしまって、うまく言葉が出ない。

だめよ!

だめなの


「 だめ!! 」


振り絞って出した声でふりむいたテマリさんの頬を力いっぱいひっぱたいた。


「 何よ!大人みたいなこと言っちゃってさ!!テマリさんだって子供じゃないの! 」


いのの剣幕に、テマリははたかれた頬に触れながらぽかんとしていたが、我に返って叫びかえす。


「 なっ…お前に何がわかる?! 」

「 わかんないわよ!!そんなの…!! 」


いのは一度呼吸を落ち着けて、言った。

私はそんなのが大人だって言うんなら、子供で、いい。
自分の感情を捨てるような人が大人なら、子供のままで、いい。

二人は一緒にいてこそ、私の中で二人として存在するの。



「 先のことを見るのは忍として大切だって確かに教わったわ。

  だけど、だけどね?

  女としてはいらないじゃない。

  人としてはいらないじゃない。

  先のことなんてそのとき考えればいいわ。 」



いのはそういったきり、また泣き出した。呆然としたままのテマリはいのを見つめるばかり。

一番後ろにたったままだったチョウジがいのの元にやってきて、背中をポンポン、とたたいた。



「 …僕はいのの言うとおりだと思う。

  もしも、ここで二人が別れたまま、仮に木の葉と砂が戦争になったとしたら

  二人は後悔する。だけど、きっとお互い仕事なら殺しあうよね。

  でも、そうじゃなかったら? 

  二人が仲のいいままなら、戦争になっても僕だっていのだってシカマルだって、…テマリさんだって

  なんとか戦争を回避しようともがいて、頑張ると思うよ。 」



チョウジの言葉に、テマリは顔を上げる。頬は赤くはれたままだが、痛みは不思議と感じなかった。
いや、痛みのことを忘れていた。



「 違う?シカマル 」



いのをなだめながらシカマルをふりかえったチョウジは、そのままいのをつれて、里の方へ歩き出した。


「 …チョウジ 」

「 ん? 」

「 …さんきゅうな 」

「 …うん 」


すれ違い様に短い会話をして、シカマルはテマリへ近づく。テマリは呆然としたまま、シカマルのことを見ることも、よけることもしなかった。
そしてそのままテマリを抱きしめる。



「 …っ…離せ 」

「 嫌だね。離さない。 」

「 …ッ… 」

「 …なぁ 」



言葉とは裏腹に抵抗することもできないテマリを、さらに力をこめて抱きしめてから、
テマリの肩をすこしうしろにやって、シカマルはテマリの顔をのぞきこむ。
その顔は真っ赤で、泣きそうで。でも泣くことができない、奴で。俺が、まもってやんなきゃだめだって思った。



「 俺のこと、嫌いか 」

「 嫌いだ 」

「 げ、まじかよ 」

「 …嫌い、大嫌いだ。嫌いにならせてくれないお前なんか、私を弱くするお前なんか… 」



いいかけたテマリの口を、シカマルが軽い口付けでふさぐ。



「 それ以上嫌いとかいうなって。マジ、へこむから。 」

「 …フン。 」

「 …めんどくせー先のことは、そんときになってから考えようぜ。

  それじゃ、だめか? 」

「 … 」

「 …大体、今更もう、無理。 」



シカマルはテマリを抱きしめる腕に、テマリが痛みを感じるくらい、力をこめる。




「 もう…手遅れだっつの。 」




耳元で搾り出すようにしてはかれた吐息のようなシカマルの声に、テマリの顔は真っ赤になっていく。




「 今更忘れろ、なんてめんどくせーことさせんなよ。 」




ゆっくりと、テマリの手が、シカマルの背中へ回った。

背中に感じる二つの暖かさが、とけそうなくらいシカマルの思考を麻痺させる。




「 …ああ、私もだ。 」




お互いに強く、抱き合って。

もう、離れたくないと、本気で思った。





















「 いの 」

先を歩くいのにチョウジが優しく声をかける。
しばらく泣いた後、二人そろってもどってきたテマリさんとシカマルを散々からかって、文句をいって(シカマルは「自分のこと棚に上げて、」と小さくぶちぶち文句を言っていた。)いのはいつもの通り笑った。

でも後ろ姿が寂しそうだったから。
夕日のせいなんかじゃなく、長い髪がいつもよりよくゆれた一日だったから。

「 んー? 」

返された声も、いつもの声だけど。
ふりかえらない彼女に、僕もいつもの声でいつも思ってることをいうんだ。


「 僕の特別な席はいつも、いのだけだよ。 」



僕の言葉に驚いて、いのは半分泣き顔みたいな顔を見せた。
僕はいのにいつものとおり笑ってみせる。


「 ありがとー…チョウジ。あんたやっぱり最高よ。 」

「 ありがと 」


いのが笑ってくれるなら、僕はいつでも喜んでキミの元へ。

いののその笑顔がいつ、どんなとき失われても。

僕が必ず、取り戻してあげるから。

だから、いの。

キミの特別な席にいつか座らせてね。






キレイな夕日。


やっぱり私のシカマルへの「好き」には少し、少しだけ「LOVE」が入っていたのかもしれない。
だから、少し、きれいな夕日がきれいすぎて寂しく見えるのかもしれない。

でも、ね。

あの太陽に願うのは

どうかこれから先、二人が悲しまなくて済むように。

優しい二人が殺しあうことのないように。

シカマルの左肩 テマリさんの額に輝く、お互いの大切なふるさとも、
大切な人も失うことのないように。

私の大好きな二人が二人で幸せでいられるように。

私が好きなのは シカマルと一緒にいるテマリさん。
テマリさんと一緒に居る、シカマルなんだから。











明日は雨って、昨日の天気予報が言ってたけど、

どうやら通り雨ですんだみたいだ。


ああ、今日も


いい、天気だ。







































すこしチョ→イノ要素を入れてしまいました。
本当はいのちゃんをもっと嫉妬深くて本当にシカマルに片想いにするつもりだったんですが、
いのちゃんは本当にいい子だと思ってるんで悲しませるのが嫌で…。ちょっと甘くなりました。
まとまりの悪い話ですみません。書きたいことが沢山ありすぎてうまくいきませんでした。
ご愛読ありがとうございました。

2006.8.14