私の数メートル手前に並んで歩く二人の姿。
最近見慣れたあの顔。きつそうな(実際性格は結構キツイ人だ)きれいな色した目に、私よりくすんだ四つに分けられた金髪。
あと、何年もずっと隣で見てきたひっつめた黒髪と漆黒の瞳、めんどくさそうな顔。

そして最近、思う。

そこは私の席なのに、と。













本日も晴天なり。   前編













シカマルはテマリさんのお見送り役。それは、知ってる。
テマリさんが昔シカマルの命を救ったことも、ソレより前にシカマルが中忍試験でテマリさんと戦ったことも、知ってる。

でも


「 ホント、よく食うな 」

「 うるさい。お前には関係ない。 」

「 へーへー…めんどくせぇ 」


あんな優しい目をしたシカマルは、

あんな嬉しそうなテマリさんは、

あんなやわらかい「めんどくせぇ」は、


知らない。




私の中にぐろぐろとした感情が芽生えたのはシカマルがテマリさんに助けられた頃から。
徐々に大きくなっていくその黒い塊に、私は目を背け続けていたのに。
最近は手がつけられない。大きすぎて。



「 山中じゃないか 」

テマリさんが私に気づいた。…なんでシカマルはもっと早く気づかないのよ。いつもは後ろにいたって気づくくせに。


「 どうした、いの。なにそんなトコに突っ立ってんだ? 」


いつものままの顔でシカマルは私に問いかける。テマリさんのときとは違う、そのいつもの目で。


「 べっつにー!二人とも仲よさそうにしてるから邪魔しちゃいけないと思ってーv 」


いつもの顔していつものテンションで振舞う私の言葉に、照れたり、しないで。


「 ばっ…うるせーな。コイツが甘いもん食いてぇって言うからついでに寄っただけだよ 」


ほら、そんな顔。いつもならちょっと体調が悪いのだって見抜くくせに。


「 何を言う。私は帰りでも、一人でも良いといったはずだ。 」


つん、とそっぽむくテマリさんにちょっと困った顔するのも。
…私とはめんどくせーって甘味処になんてついてきてくれないくせに。
テマリさんといるとすべて周りが見えなくなってる。

ねぇ、この黒い感情をどうにかして。



「 それより、早く行くぞ。火影様との約束の時間になってしまう。 」

「 食ってたのはお前じゃねーかよ… 」

「 うるさい。黙って来い。 」

「 へーへー… 」



そこは私の席なのに。

あなたなんかよりずっと長くシカマルと一緒にいたんだから。
あなたなんかよりずっとシカマルのこと知ってるんだから。

…悔しい。



「 山中?大丈夫か?なんだか体調がよくないみたいだが… 」


テマリさんは、ぶっきらぼうだし、無愛想だし、言うこときついし、怖いとこもあるけど、でも優しい。

とても、いい人。本当に心からそう思うのに。

どこかでうとましく思っている自分が、嫌。


「 大丈夫か、いの。 」


近づかないで。本当に。感情があふれ出しそうだから。
うつむいた私に近づいてきたシカマルをテマリさんが制して、テマリさんは私の額に手を当てる。


「 少し、熱いな。ついでに火影様に診てもらおう。山中も、来い。 」


そういって私の手を引いて歩き出す。
ちょっと前なら自己管理がなってないとかいって叱咤しただろう。
わざわざ自分の手で熱をはかったり、手を引いてくれたりしなかったろう。


テマリさんは変わった。

シカマルと会ってから変わった。


…シカマルもテマリさんと会ってから、変わった。













「 山中、平気か 」

火影様の建物に入って、シカマルと分かれてからもテマリさんは私を気遣ってくれた。
だけど、私の心にすくうこの黒い感情が、今がチャンスだとばかりに動き出す。
黒く 染まっていく。















「 …何 」


「 ですから、奈良シカマルを見送りの任からおろして欲しいのです。 」


一通りの報告が終わったあと、テマリは火影の机より1mほど離れたところにたって火影を見つめていた。
いつもの顔のまま。



「 なぜだ? 」

「 …態度です。同盟国の忍に対してもう少し常識と友好的な態度を示せる者にしていただきたいのです。
  今は私が受け持っていますが、いつこの仕事が他の者にかわるかは知れません。
  私なら気にも留めないことも、他の者には少々不快に思うかもしれませんので、
  里の連絡役としては、お互いに友好的な感情をもてる方が良いと思うのです。 」

「 …なるほど、それは一理あるな 」

「 … 」

「 しかし、それはできない。 」

「 なぜですか 」

「 …お前が、テマリじゃないからだよ。 」



綱手の言葉に、テマリは、否、テマリの中にいるいのはふっと笑った。



「 やっぱりばれちゃってましたか 」

「 なんのつもりだ…と聞くまでもないな。このことはなかったことにしてやるからさっさと帰りなさい。 」

「 ・・・テマリさんには 」

「 言わないよ 」

「 ・・・シカマルには 」

「 ・・・言わないから 」

「 ・・・ありがとうございます。すみませんでした。 」




そういうとテマリの体はガクン、とひざを突き、一瞬気配がきえ、ゆっくりと目を開けた。


「 ・・・それで?どうするんだい? 」


意味深に心なしか楽しそうに唇に笑みをのせて綱手はテマリに問う。
テマリはやっと焦点の定まってきた目を、それでいて強い目を、綱手に向けた。


「 … 」


テマリはゆっくり口を開いた。



















「 …は? 」

その20分後。いつもの通りテマリを迎えに来たシカマルはなぜか火影の部屋に通され、テマリと少し離れた位置に並ばされた。
そして、告げられた言葉は


「 だから、お前は今日限りこの任から降りろ。 」


シカマルがワケがわからないといった顔で火影を見返すと、火影はふっと短く息を吐き出す。



「 砂の使者様からの直々のお願いとあっちゃ仕方ないだろ 」



驚いてテマリの方をみてもテマリは寸分うごかず火影を見つめたままだ。


「 …わかりました。 」


シカマルは小さく了承の言葉を述べた。



































長いので前後にわけてみました。前から書きたかったお話。

2006.8.07