人生で、一番   後編1















「 ちょっとシカマル!落ち着いてよっ 」

門に向かってすごい速さで進むシカマルを追いながらいのが叫ぶと、シカマルはやっと我にかえって少し速度を緩めた。

「 悪い。 」

「 テマリさんが帰りたいって言ったなら仕方ないじゃなーい 」

「 … 」

そう、あいつをひき止めてまですることじゃないのかもしれない。
でも。
思ったらまた足が速くなる。

 頼む、まだ居てくれ



門の前に着いた。が、人の姿はない。門も閉まっている。

…ちきしょう。

門に手をついて呼吸をおさえる。こんなことなら早く伝えておくんだった。
自分がこんなに必死になるとは。そう思うと自然と嘲るような笑いが一瞬こぼれた。


「 ちょっとあれ、テマリさんじゃなーい?! 」

いのの声に驚いて振り向くと、視線のおくに探していた金髪が見えた。
あ、と少し喜んだのも束の間、隣にもう一人、人を確認した。


 ネジ…?


「 ちょっとちょっと、なんでテマリさんとネジが一緒にいるのー?!
  しかもなんかいい雰囲気っぽくない!? 」



奪還任務後、なにかと会うことの増えたあいつは徐々に心を開いてくれている。
すこしずつだけど、着実に話す声が柔らかくなっている。

それは、俺に対してだけではないが、俺の前と他のヤツとの前では少し、違う気がする。
自己満足かもしれないが、ソレが少し嬉しかった。特別な感じがしていた。

のに。



…んだよ。

何笑ってんだよ。
何はなしてんだよ。
…何 赤くなってんだ。
何だ、その嬉しそうな顔。

無性に腹が立った俺は、止めるいのの声も聞かず、ずかずかと二人に近づいていった。


「 おい 」

「 …なんだ 」


…なんで俺には睨んでんだよ。ネジのときと随分ちがわねぇか?


「 …ちょっとコイツ借りてくぜ。 」

「 って、おい 」


テマリをつかんで歩き出そうとすると、ネジがそれを止めた。


「 …借りる、ということは返す、ということか? 」

「 … 」


シカマルは無言でネジを睨む。一方のネジは余裕の笑みだ。


「 所有権は俺にあると、そういうことだな? 」

「 …訂正。もらってく。 」

「 って、コラ、奈良! 」


そのままずかずか手を引いていくので、テマリは慌ててふりかえる。


「 すまん、ネジ!ありがとう。またな。 」

「 ああ 」


…俺は「奈良」でネジは「ネジ」かよ。
後ろのテマリの声を聞きながらシカマルは頭の中で毒づいた。
簡単にまたな、なんて付け加えやがって。また、会うつもりかよ。ああやって二人で?楽しそうに?

…ちっ。ムカムカする。



「 おい、奈良!! 」

完全に自分の世界に閉じこもっていたシカマルの手を振りほどいてテマリが叫ぶ。
シカマルはめんどくさそうに振り向いた。しかし、確実に目は怒りの色を宿している。


「 …何 怒ってるんだ? 」

「 …待ってろって言ったよな? 」

「 他の者に頼む、といったはずだ。 」

「 …それがネジだったわけじゃないだろ? 」

「 秋道だった。途中で腹を壊したから別れた。 」


…ほら、チョウジだって「秋道」なのに。


「 そしたらネジに会った。それだけだ。 」


ネジは「ネジ」なのかよ。…んだよ、特別扱いか。

俺はチョウジと同じくらいの存在でしかねぇのかよ。


「 …えらくたのしそうだったじゃねぇか。 」

「 お前には関係ないだろう。 」


ピク。


「 くだらないことで話しかけるな。私は行くぞ。 」


その時シカマルのなかでなにかがはじけた。


「 なんだよその態度。人が誕生日祝ってやろうとしてるってのに…!! 」


少し荒げたその声にテマリはきょとんとした顔をむけた。


「 …何? 」

「 …だから、お前今日誕生日なんだろ?だからだな、 」

「 私たちでパーティー開こうってことになったのよ!みんな待ってるわよー! 」

「 …じゃあいのと途中で帰ったのは… 」

「 …これ、買いに行くため。 」


そういってシカマルだテマリに手渡したのは小さなサボテン。


「 お前植物好き…なんだろ?それだったら砂漠でも育つし。 」

「 私のうち花屋なのよー! 」

照れくさそうにいうシカマルと嬉しそうないのをしばらくきょとんとしたままの顔で見つめていたテマリは、急に笑い出した。


「 ?? 」

二人がテマリが笑った理由がわからずに困っているとテマリはひとしきり笑った後、顔をあげた。


「 だからみんな必死になって呼び止めようとしたのか 」



聞けばチョウジと別れたあと、キバやナルト、テンテンやさっきのネジにいたるまであらゆる人に足止めを食らったのだという。

先に「みんなに伝えてくるわー」と走り出したいのを二人でうしろから歩きながらおう。


「 んだ… 」


ネジは呼び止めてくれてただけなのか。安堵と共に浮かぶ疑問。…じゃあなんで少し赤くなってたんだ?


「 ああ、あれはだな… 」

開きかけた口をテマリは再び閉じる。


「 …教えない。 」



…は?


「 …何で 」

「 お前には関係ないからだ。 」

「 …ふぅん 」




「 テマリさーん!!シカマルー!!早くー! 」


見えてきた公園には大きく手をふるいのを筆頭に、私がかかわったことのある木の葉の忍たちが集まっていた。


「 できるだけ集めたのよ!任務でいないやつもいるけど、火影様が協力してくれたから! 」


「 っ! カンクロウ?! 」

「 よぅ、テマリ。遅ーじゃん。 」


任務に出ていたはずのカンクロウまでそろっている。…我愛羅の仕業か。


「 さすがに我愛羅は来れないじゃん。でもコレが我愛羅からの誕生日プレゼントじゃん。 」


手渡された手紙には我愛羅の几帳面な字で

『 木の葉で3日間、視察任務だ。休暇も兼ねて好きにして来い。 』


とだけ書かれていた。我愛羅らしい。

乾杯をするなり大声で騒ぎながら主役のテマリを半ば無視して暴れまくる木の葉の連中をみてテマリはふっと笑った。

「 …まったく 本当にお節介な奴らだな。 」

「 まぁ たまにはこういうのもいいじゃん? 」

テマリにそういうなり、キバとナルトのお菓子争奪戦へちょかいだしにカンクロウは去っていく。

そうだな、たまには。


「 ほら 」

いつの間にかよってきたシカマルがテマリにグラスを手渡す。

こうして


「 …誕生日だなんてすっかり忘れていたよ。 」

「 だろうな。俺も毎年そうだ。 」


緑に囲まれて、


「 …昔は誕生日なんてなくていいと思っていた。

  生まれてなんてこなければよかったと。

  不思議だな。まさか他里の忍に祝われるなんて。

  …生まれてきてよかったと、少しでも思うことができるなんて 」


テマリは目を瞑り、優しい風に身を任せた。

その笑顔は砂の乾いた国にはあわなそうな、緑の木の葉にとてもよくあう、柔らかな顔だった。


「 …18歳、おめでとさん。 」


お前に祝ってもらえることを

こんなに嬉しく思うなんて。


「 …ああ。ありがとう。 」


シカマルは言おうかいわまいか迷ったのか、何度か口を開けたり閉めたりしてから、意を決して口を再度開く。


「 生まれてきくれてありがとよ。 」


「 …お前がそんなことを言うとはな。 」


「 あー…お前が居なかったら俺あんとき死んでたかもだしなー… 」


「 …そうだな。 」


「 ねーちゃん!今日の主役なんだからそんなとこいねーでこっち来るってばよ! 」


テマリはナルトにふいに手を引かれて輪の中心へ連れて行かれる。

…そんなとこってな

俺の隣が、かよ。

シカマルはテマリの腕を握るナルトの手を少し睨みつけながら、テマリの周りに集まってくる同期の連中を少しうっとうしく思った。
いつもは聞いても居ないくらいの仲間のセリフがいちいち耳に引っかかる。

…これもあんたのせいなんだぜ?


「 シカマルの隣になんていたら”めんどくせー”が移っちゃうわよー! 」

「 悪かったな 」

「 そーそー!こっち来て食おうぜ! 」

「 わん! 」

とたんに周りをかこまれてテマリは少し困惑する。あっちからこっちからうるさい奴らだ。
するとふいにうしろから落ち着いた声がした。


「 騒がしい連中だ。 」

「 ネジ 」


テマリがネジを呼ぶ声と、ネジの声に反応して数歩前に居たシカマルはふりかえる。
テマリの後ろにたつネジを、シカマルは他の連中とは全く違う、強い目でみる。
本人も気づかぬ間に目に敵意が含まれている。










































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2006.9.30