人生で、一番   後編2















「 お邪魔するわねー 」

テンテンがそう告げて、ネジにグラスを渡して、リーにも続けてわたしにいこうとその場を離れた。
それを見計らってシカマルがネジに声をかける。

「 …なんか用すか 」

「 …祝い事の主に挨拶するのは当然だろう。 」


ネジとシカマルの間に微妙な空気が流れる。その間に立っているテマリは天然なのか頭に?を浮かべている。
周りがそれにきづいてこそこそと話し声を始めるが、シカマルの耳には聞こえていない。


( なんでシカマルあんな怖い顔してるんだってばよ? )

( わかんねー。っていうかテマ姉とネジ仲よさげジャン、どういう関係? )

( 知らないじゃん。俺はネジとは面識ないじゃん。 )

( それがさっきさー… )

( 何、じゃあこれ修羅ばなワケ?!しゃーんなろー! )


ひそひそと話してはいるがまる聞こえだ。
テマリはその空気に耐えられなくなってシカマルに怒鳴り込む。


「 奈良、何がそんなに気に食わないんだ? 」

シカマルの眉間のしわを人差し指でついて、テマリは腰に手を当てる。
困ったような顔に変わったシカマルの視界には、ニヤリと笑うネジが見える。


「 …悪いけど、所有権はゆずらねぇぜ。めんどくせーけどな。 」


シカマルのそのセリフにテマリ以外の誰もが一瞬動きを止めたのは言うまでもない。
本人はその意味の深いところに気づいていないが。

それでもネジは余裕の笑みで返す。


「 …雲に風を止められるかな 」

「 … 」

「 もう、ネジ!そのくらいにしなさいよ。 」


みかねたテンテンがネジをとめに入る。テンテンにはわかっている。
このネジの顔は確実にシカマルをおもちゃとしてみている。別にネジがテマリを手に入れたいとか思っているわけではない。
単に、後に木の葉の策士と称されるこのIQ200の男をこうもからかえるネタとして楽しんでいるのだ。

シカマルだってそのことに気づいていないわけではない。

だけど自信がないから、むきになってしまうのも事実なのだ。

渡したくないものはめんどくせーが譲らねぇ。

いつから自分はこんなに強欲になったんだろうか。

シカマルはグラスを左手にもちかえて、右手でテマリを自分の後ろに追いやる。


「 奈良?一体なんなんだ? 」

「 …先ほどのはどうだ。 」

シカマルを無視してネジはテマリに話しかけた。テマリはああ、といって笑う。
シカマルは自分にはわからないその内容が、ひどく癪に障った。


「 すまなかったな。助かったぞ。 」

「 なら、いい。 」

くるりと背を向けたネジはシカマルに向けて少しだけ白い目を動かして、シカマルにだけ聞こえる小さな声で警告する。

「 せいぜいしっかり捕まえとくんだな 」

「 … 」

そのまま歩いていくネジをテンテンが追っていく。周りの緊張感もとたんにとけた。
シカマルがゆっくりテマリを振り向く。テマリはいまだにきょとんとしている。


「 …さっきのって何 」

「 …だから、お前には関係ないだろう。 」

「 …あんだよ 」

「 なぜ 」

「 … 」


シカマルのじれったさにイライラしながらも、まわりは確実に二人の会話に意識を集中している。
カンクロウなんか笑うのを必死にこらえているのだから、まさかこの場で告白なんてできっこない。


「 あーれーは 」


シカマルを哀れに思ったのかテンテンが助け舟をだす。
そのテンテンをみて、テマリは顔を赤くしてあわてて止めようとした。
しかし、テンテンがそのくらいで止まるわけがない。


「 テマリさんが足を怪我したのよ!誰かさんのこと考えてて油断してねー。 」

「 っ!!テンテン!! 」


ニヤリ、と笑うテンテンに、テマリは顔を真っ赤にして怒鳴る。テンテンは笑いながらシカマルに近づいて耳打ちした。


「 しっかりしてよ?テマリさん相手じゃ私、厳しいじゃない。 」


テンテンの言葉にシカマルはあわてて振り向くが、テンテンは「じゃあね」といってさっさとネジのほうへかけていく。
テマリは顔を真っ赤にしたままだ。
周りがそれをみて修羅場の集結を認識し、二人への視線をはずす。
これからは単なる…


「 …それで手当てしてもらったってことか 」

「 うるさいっ!!大体お前が、… 」

「 何、誰かさんって俺のこと? 」


惚気、だ。
いつの間にやらシカマル優位になった。テマリはシカマルのそのセリフにくやしそうに口を閉ざして、くるっと反対方向に歩き出した。

「 あ、おい。待てよ。 」

「 うるさいっ!ついてくるな! 」

「 いちいち怒鳴るなよ、めんどくせーな 」

「 めんどくさいならついてくるな!! 」

そういって振り向いたテマリの手をつかんで、引く。驚くほど近い距離のところにシカマルの顔が見えた。

「 うそ。めんどくせーなんて、マジで言ってられない。 」

「 っ… 」

テマリの顔も信じられないくらいに真っ赤だが、それにつられたかのようにシカマルの頬も、少し赤かった。
その顔を見られないように、シカマルはテマリを抱きしめる。痛いくらい、強く。

「 …ホントに生まれてきてくれてよかった。 」

「 ―奈良 」

「 シカマルだ 」

「 …シカマル 」  

テマリはゆっくりシカマルからはなれる。シカマルはまだテマリの顔を直視できずに顔をそらしている。

「 欲をいうならあと3年くらい遅く生まれてくれてたら良かったんだけどな 」

そう苦笑いしたシカマルに、テマリは思わず噴出した。

「 …笑うなよ 」

「 は、お前なんかに追いつかせてやらないよ 」

笑いながらも、いつもの憎まれ口をたたくテマリに、シカマルは頭をかいて、「めんどくせー」とつぶやく。

「 あーあー、のろけちゃってー 」

「 ホント、勝手に二人だけの世界に入らないでよねー! 」

サクラといのがそう声をかけると、まわりからひやかすような声と口笛が次々聞こえて、テマリとシカマルはあわててお互いに距離をとった。
二人とも真っ赤よーといわれながらいのがテーブルのケーキへ向かっていく。
テマリさん!ほら、とサクラに手を引かれて、テマリはテーブルの中心へ連れて行かれた。

「 なんだ? 」

「 ローソクの火をね、一度で全部吹き消せたら願いが叶うのよ! 」

「 願い… 」

無理だと、知っていても
わかっていても
願わずにいられないんだ。

こんな時間が
こんな日々が
いつまでも、いつまでも ずっと


「 テマリ 」


…シカマル、お前と共に
いられる日々が、ずっと
続けばいい。


ロウソクは一本のこして消えた。



ああ、やっぱり。

無理な願いだったか…


自嘲気味に笑いかけたテマリの横をすり抜けて、シカマルがふぅっと残りのロウソクを一本吹き消した。

驚くテマリに笑ってみせる。


「 その願いは、一人で叶えるもんじゃ ねぇだろ? 」


ひどく大人びたような、はたまた屁理屈をいう子供のような彼の笑顔と、
周りの笑顔につられてテマリも微笑む。

「 …ああ 」






「 …って 」

パーティも終わり、暗くなった道を、シカマルがいつもの通りテマリを宿まで送る途中のこと。
カンクロウは気をきかせたのか「片づけを手伝う」といって残った。

テマリはふと気がついたかのようにはっとした顔をした。

「 何で私の願い事がわかったんだ…?! 」

いきなり立ち止まって指を指し、怒鳴りつけてきたテマリに、シカマルは思わず噴出した。

「 今更かよ。めんどくせー… 」

「 めんどくせーじゃない!!というかお前、甘味どころへの近道を私に隠していただろう?! 」

完全に不機嫌モードに入ってしまったテマリはそっぽを向いて歩き出した。
シカマルは首の後ろをかきながらめんどくさそうにそれに続いた。

「 んだよ?それ 」

「 秋道がシカマルから教えてもらった、といっていたんだ! 」

ぷりぷりと怒りながら叫ぶテマリを、なんだか可愛いと素直に思ってしまえた自分に気づいて、
少し照れた。

「 あー…それはだなぁ… 」

「 なんだ?私には教えたくなかったというのか? 」

「 まー…そういえばそうだな。 」

シカマルの言葉にテマリの胸が小さく悲鳴をあげた。それが悪化しないうちに、シカマルはため息をひとつついて、すぐに言葉をつなげる。

「 勘違いすんなよ。めんどくせーから 」

「 は?何が勘違いだ。どうせ里の違う私にそんな道を教えたくなかったんだ… 」

テマリの言葉は最後まで続けられなかった。
半ば八つ当たりのように、早口で言い切ろうとしたテマリのその薄桃色の唇を、己のそれで封じた。
音はそのままシカマルへと伝わる。
テマリは唇がはなされてもそのまま動かなかった。
いや動けなかった。
それをいいことに、シカマルは再び抱きしめてキスをする。
二回目のキスの途中で、やっとテマリは我に帰り、シカマルの胸を押した。
それでやっと、シカマルもテマリの口を開放したが、抱きしめた両手は離さない。

「 …っ シカマルっ 」

真っ赤になるテマリが可愛くて。
だけどそれ以上に赤くなっていそうな自分の顔を見られたくなくて
シカマルはテマリの顔を自分の胸に押し付ける。

「 俺だって… 」

「 ? 」

「 同じ…なんだよ 」

「 ? どういうこと… 」

「 だーっから、 」

めんどくせー、といいながらテマリの肩をつかんで、少しはなれてまっすぐテマリの翡翠の瞳を見た。
すこし、揺れる深い翡翠色。
それと闇より深い漆黒の瞳が、交じり合う。
まるで黒アゲハのような色合いの二つの瞳が、混じる。

「 お前と少しでも長く、一緒にいたかったんだ…っつの 」

声がだんだんと小さくなるにしたがって、シカマルの目と顔はテマリからそれていった。
横に向けた顔のおかげで、シカマルが耳まで真っ赤なのがよくわかった。
テマリは一瞬呆けていたが、すぐにプっとふきだして、大きな声で腹を抱えて笑い出した。

「 …んだよ 」

ばつが悪そうにすねた顔になった、それでも真っ赤なままのシカマルは、両手をポケットに入れたまま、横目でテマリを睨むように見た。それでもテマリは笑い続けている。
笑いのあまり目に浮かべた涙をぬぐって、テマリはシカマルに向き合った。

「 私と長く一緒にいたくてわざと遠回りをしてたのか。可愛いとこあるじゃないか 」

「 …っせ 」

「 うるさいとはなんだ。本当なんだろう?ん?? 」

にじり寄るテマリを避けるように後ずさって、シカマルは先へ歩き出した。

「 あー、めんどくせー…これだから女ってのはよー… 」

「 でも一緒にいたいだろ? 」

「 …めんどくせー 」

「 私も、お前と一緒にいたいよ。 」

それに驚いてこちらを向いたシカマルに、テマリは軽くキスをした。
月明かりで伸びた影がひとつになる。

…影で縛ったりなんてしなくても、私はお前から離れられないかもしれない。

ずっとずっとそばにいれたら。

それはなんて 贅沢なんだろう。

「 誕生日 おめでとう 」

「 …ああ 」


ありがとう。

最高の誕生日を

祝ってくれた人たちに

出会わせてくれたことに

…私をこんな穏やかな気持ちにしてくれる。

シカマル、に

最高の、感謝を――…







「 ネジを名前で呼ぶ理由?

  ああ、だって「日向」だとヒナタとかぶるだろう? 」

その言葉にシカマルはトレードマークの黒髪をがっくりたらしたそうな。










































今更ですみません。テマリさんお誕生日おめでとう。

2006.9.30