人生で、一番   中編















火影の用はたいしたものじゃなかった。
自分がわざわざ足を運ばなくても、伝達しておけばかまわなそうな、風影への伝達と、書類ばかり。
なんだ、こんなことなら来るんじゃなかった。
そうすれば、こんな気持ちにもならなかったのに。

「 それで、今日はどうするんだ?宿をとるんだろう? 」

美しい火影は頬杖をついて仕事モードの体制を崩した。

「 いえ、今日は日が暮れないうちに里を出ようと思っています。 」

そういうと火影はひどく驚いた顔をした。…なんだ?別に珍しいことでもないだろう?

「 …なんだい。シカマルに聞いてないのか? 」

チク。
その名前は今一番聞きたくなかったのだが。仕方がない。
それよりも何を、だ。

「 自分が言うというから黙っていたのに。仕方のないやつだねぇ… 」

くるりと椅子ごと窓にむいて、火影は大きくため息をついた。
なんだ?シカマルは何を私に伝えるつもりだった?

「 …奈良シカマルとは途中で別れました。何か用事があったようなので見送りを他の忍に頼みたいのですが。 」

見送りといったって見張りのようなものだ。別に私と面識がある必要も、ない。

「 …どうしても、帰るのかい?我愛羅からも3日は滞在するように言われているんだろう? 」

「 …申し訳ありません。 」

「 …そうか。 」

火影は頬杖をつきなおして、目を閉じた。この里に、いたくない。今は一刻も早く抜け出したいのだ。
おかしな話だ。いつもはもう少し観光したいと思うくらいなのに。

「 わかった。今手のあいている者を迎えによこすからしばらく待っていてくれ。 」

「 わかりました。ありがとうございます。 」












「 …お前 」

「 テマリさんこんにちは。」

バリバリと挨拶の間も手と口を休めることなく、体に良くなさそうなスナック菓子を食べ続ける男を見るのは
そう珍しいことでもなかった。
シカマルとスリーマンセルをくみ、親友(らしい)の秋道チョウジだ。


「 すまなかったな、今日はお前も休みだったのだろう。 」

スリーマンセルのうち二人が休みということはきっとこいつも休みだったのだろう。
申し訳ないことをしたと思ってそういうと、ヤツはにっこり笑っていった。


「 ううん、シカマルにも頼まれたし、僕は別に気にしてないよ 」

…頼むくらいなら自分で来い。
そうおもいながらなぜ私の迎えをあいつなんかが管理しているみたいにされなきゃいけないのか。無性に腹が立った。


「 そうか。 」

コイツをみていると少し、胸が安らぐ。なんだか争うことにはむかなそうな優しい、顔だ。
あいつと親友だというのもなんだか納得がいく。
のんびりとした性格は私にはあわなそうだったが、それでも一緒にいるのに不快感は感じなかった。


「 テマリさんって甘いもの好きなんだよね? 」

なぜ、そんなこと知っている?

「 シカマルが言ってたから 」

「 …ああ 」

「 じゃあ、ちょっと寄り道していこうよ 」


そういってチョウジは道を右折した。
アイツが他人に私の話をしただと?そんなこと…

胸が少しはずんだのは…ただ、少し、意外だと思った だけ、だ。
誰に聞かれているわけでもないのに頭の中で言い訳しながらチョウジについていくと、そこには時折シカマルが案内してくれる甘味処があった。
おかしいな。いつもの道じゃなかったんだが。


「 ここのあんみつと甘栗がおいしいんだ 」

私のためにというよりは自分のためのようにものすごく嬉しそうに笑って、席についた。
さっそくだんごやらあんみつやらどう考えても二人分には多すぎる注文をしている彼をみていると、
なんだかさっきのことも心から消えかけていた。


「 ん。美味い。 」

「 でしょ? 」


私の3倍くらいの速度で団子をほおばりながら独り言のような私の発言に反応してくれた。
甘いものが苦手なシカマルとくるよりは、一緒に食べれるチョウジはいいかもしれない。…のに、なんだか違和感がある。
隣にいるのがヤツじゃないことに違和感が。


「 ここへの道、いくつもあるのか? 」

「 あ、あれは前にシカマルが教えてくれた近道。 」


少しも手を休めることなく餡蜜を食べ始めたチョウジは私のほうをふりかえらずにいった。
…近道知ってるならつかえばいいじゃないか。あんな道はとおったことがない。

それとも私には教えたくなかったとか?
ゾクリ、と胸に特有の痛みが走る。物理的なものとは違う、厄介な痛みが。


「 …仲、いいんだな 」

「 うん。シカマルは優しいから 」


そう、アイツは誰にでも優しい。だからこそ、優しくされたくない。
普段優しくなんてされたことのない私にあの優しさは、ダメだ。
誰にでも同じように優しいくせに。
ずるい。


「 …そう、だな 」

「 う…! 」

「 どうした、秋道?! 」


チョウジは突然腹を抱えてうずくまった。椅子から崩れ落ちるそいつをみて慌ててテマリがかけよる。
従業員も心配そうに見つめている。


「 おなか…痛い。またちょっと食べ過ぎたかな 」

その一言に安心したような呆れたような脱力を感じてふーっと長く息をはく。

「 じゃあ、病院へいけ。私ならもう門も近いし大丈夫だ。おい、こいつを頼む。 」

従業員にチョウジを預ける。こいつが病院に行くとなるときっとシカマルといのも来る。
…はちあわせはごめんだ。
少し白状は気もするが、仕方ない。すまない、秋道。今度くることがあったら団子でもおごるよ。


「 じゃあ、ありがとな。少し急ぐから、お大事に。 」

「 あ、テマリさ…! 」

チョウジが言葉を続けるより先にテマリは店を出て行ってしまった。がくりと頭を下げる。

「 …ごめん、シカマル。 」

チョウジの独り言は、誰の耳にも届かなかった。









「 それであいつ帰しちまったんですか?! 」

火影がうなづくと同時にシカマルは部屋を飛び出す。
一緒にいたいのは「失礼しましたっ」と慌てて頭をさげてシカマルを追った。

「 …若いね。必死になっちゃって。 」

綱手はきぃ、と背もたれをならして誰に言うともなくつぶやいた。









































すみません、まだ続きます。

2006.9.21