人生で、一番   前編















8.23





「 テマリ 」

廊下を歩いていると突然我愛羅に呼び止められた。我愛羅がわざわざ自分から私を呼ぶなんてなかなかないことだ。
風影として仕事を頼む時だって、伝書で私から出向くのが普通なのだから。


「 なんだ? 」

「 明日から木の葉へ向かってくれないか 」

「 木の葉へ? 」


木の葉に行くような任務があっただろうか。
定例会議は先週終えたばかりだが。


「 別にかまわないけど 」

「 そうか、頼む。 」


我愛羅が人に頼みごとなんて滅多にないから、言ったときは任務の時以外受けてやろうと思っていた。
しかし、どうも腑に落ちない。

なぜ、木の葉に?







木の葉に向かう理由を告げられないままに私は翌日、木の葉に向かった。
結局いくら問うても、とりあえず里に向かえば案内の忍がいるから従えばよい、としか我愛羅は言わなかった。

( 一体なんなんだ )

そう思いながらもテマリは木の葉の里への歩みを速めた。







「 やはり、お前か 」

「 …悪かったな、アホ面で 」


3日後、木の葉の里についたテマリを迎えたのは仏頂面の見慣れた顔だった。この里に来るたびに顔をあわせる木の葉の中忍。
常に猫背の姿勢を保ったままのそいつをみると、なんだかひどく安心する。ああ、木の葉の里にいるんだな、と思う。


「 なにもそこまでは言ってないだろう。 」

「 どうせその後言うんだろうがよ。 」

「 よくわかったな 」


いつもと同じような短い挨拶代わりの会話をする。いつもほとんど会話らしい会話はない。
どちらからともなく何か話し始めることはあるが、そう長く言葉を交わすことはない。
しかし、それが居心地のよい関係なのだ。どちらが無理に気を遣うこともない、この距離。

ところが今日はいつもと少し様子が違った。
挨拶がすんでから、シカマルは何か言いかけてやめたり、しきりに周りを気にしたり落ち着きがなかった。


「 どうしたんだ? 」

「 何が? 」

「 お前、今日いやにそわそわしてないか? 」

「 別にそんなことねーよ、メンドクセー… 」


そうしてまた、言葉はなくなるが、やはりシカマルは何かを気にしているようだった。
次第にイライラしてくる。


「 何か言いたいことがあるならはっきり言え 」

「 だから、別にねーって…めんどくせー 」


ついに半ば脅しのような口調になってきたテマリからシカマルが視線をはずしたときだった。


「 シッカマルー!! 」

髪の長い女が大きく手をふりながらこちらへ駆けてきた。何度か面識のある山中いの、だ。
確かシカマルとスリーマンセルを組んでいる。
高い声、女性らしいさらさらとやわらかく艶のある髪をうらやましいと何度思ったことか。
彼女は本当に忍ということを感じさせない、一人の女性だ。
年々女性らしく美しく成長してきたように思う。同性の私から見てもそう、思う。
つまりは


「 いの、どうだ? 」

「 OKよー!いつでも! 」

男から見ればきっと、もっとそう女を感じさせるのだろうな。
ああ、出かける約束をしていたのか。幼馴染と、いっていたものな。いつみても仲がよさそうだ。
チクリ。
…なんだ?この感じ。


「 あらーテマリさんこんにちわーv 」

「 ああ 」


いのは二人の間に入れず(入ろうなどとも思っていないが)少し離れてみていた私に気づくと、いとも軽々と私の名前を呼んだ。


「 シカマルはどう? 」

「 ああ、俺はめんどくせーがコイツを火影のところまで案内してから行くぜ 」

「 そー 」


シカマルのその言葉に少しいのの声が落ちるのを感じた。
それと、今までまったく気にならなかったシカマルの、「めんどくせー」がイヤに耳に残るのも。

……なんだ。めんどくさいならこんな任務、おりればいいじゃないか。

妙にシカマルの言葉に毒づきたくなった。



「 私なら、もういい。火影の元ならもう目の前だ。行けばいいだろ。 」



自分で頭で考えるより先に言葉が口から漏れた。驚くほど、静かに。

シカマルはその声に、木の葉崩しの頃のテマリのドクドクしさを感じて、一瞬と惑った。


「 そういうわけにはいかねーだろ、仕事だしよ。 」

「 いいじゃなーい テマリさんがそういうんだから甘えましょーよ!
  せっかく休みとったんだし!早くしないと! 」


いのはそういうとシカマルの腕にからみついてシカマルをひっぱって歩き出した。
シカマルはおい、とかいいながらもつれられていく。


「 悪いな、じゃあ後で帰りは迎えにくっから待ってろよ。 」

「 別に、他の者に頼むからかまわない。 」


そう言ったテマリの顔を、眉間にしわを寄せた少し機嫌の悪そうな顔でシカマルはみつめたが、
テマリは一度も目をあわそうとはしなかった。

その場からシカマルが見えなくなるまで立ち尽くしていたテマリは小さく息を吐く。

…なんだ、せっかく休みとった、って。
まるで私のせいで休みがつぶれたみたいな言い草じゃないか。

…あいつもあいつだ。
なに、絡みつかれて鼻の下なんか伸ばしやがって。忍なら最後まで任務をまっとうしろ。


自分からかまわない、といったくせに正反対のことを思いながら、テマリはくるりと火影のほうに歩みをすすめた。

早く終わらせて、今日のうちに帰ろう。
なんだかそんな気分だった。









































今更テマリさんお誕生日2作目。しかも続きます。

2006.9.18