足りない   前編
















9.22 深夜0時




「 おめでとー!!シカマル!! 」


パンパンとはじかれるクラッカーのリボンを頭にいっぱいからませて、シカマルは盛大にため息をついた。

「 なんだってばよ!俺たちってば、せっかくお前のためにこ色々準備したってのに!! 」

口を精一杯尖らせてナルトが文句をたれる。

「 し、しかたないよ、シカマル君今任務から戻ったばかりなんだし・・・ 」

後ろからヒナタがあわててナルトをなだめにはいった。

そうだ。今、俺はアスマとのツーマンセル、Bランク任務を終えてきたばかりなのだ。
ああ、早く風呂はいって寝ようと、玄関の扉を開けたらこの騒ぎだ。

「 まさかそれくらいで疲れてないわよねー?シカマルー 」

それくらい…ってお前な…

「 それより、僕はやくケーキ食べたいな 」

…やっぱりソレか。

「 おっしゃー!!俺が乾杯の挨拶してやるぜー!! 」

なんでお前がすんだよ…

「 ワン!! 」

……

無駄にカラフルに飾り付けられた俺の家と、奥で笑ってる母ちゃん。
目の前にはナルトに、サクラ、いの、チョウジ、ヒナタ、シノ、キバ、赤丸。
俺の同期勢ぞろいって感じでクラッカーを握ってやがる。

「 はー・・・ なんでいんだよお前ら・・・ めんどくせー・・・ 」

「 ちょっとぉーめんどくせーとはなによ!!せっかくこんな真夜中にみんな集まったんだから!! 」

「 だぁーうっせぇな・・・俺は疲れてんだよ 」

隣で文句を言いながらついてくるいのを無視してとりあえず着替えに二階へあがる。
俺は肩がこってんだよ、足がつりそうにいてぇんだよ、泥だらけの体を洗いてぇんだよ。

だけど年に一回のこのイベントに悪い気がしないのもまた、事実。


「「 かんぱーい!! 」」


キバとナルトがバカみたいに歌いながら騒いでるのをいのやサクラがみて笑って、
チョウジは主役の俺よりケーキやらなんやら食い続けて、シノは何考えてんのかしらねーが、騒いでるナルトを見つめてるヒナタの隣で静かにお茶を飲んでる。

それを立てた右ひざにのせた手でお茶を飲みながらシカマルは傍観していた。

毎年、確かにめんどくせーけどそれなりに楽しかった。
だけど、今年は少し、少しだけ、何かが物足りない。
それが何なのかは、よくわからない。

考えているといつの間にかチョウジが隣にきていた。(それでもまだケーキは持っている)

「 ・・・シカマル 」

「 ん 」

「 15歳、おめでとう。 」

そういってチョウジは満面の笑みを浮かべた。体の疲れもすっと落ち着くように
なんだかほっと心が休まるような気がした。
ああ、そう。

「 ・・・サンキュ 」

ここは俺の生まれ育った、暖かい里だ。

「 明日の私の誕生日も楽しみにしてるわよー?! 」

いつの間にか俺のほうへ向いていた彼らの視線に混じって意味深にいのは笑って見せた。

「 おめでとう、シカマル 」

「 ・・・ああ 」

ここが、俺のあるべきところ。俺のいるべきところだって、本当にそう思って
すごく俺らしくもねぇけど、

恵まれてんな、って思った。


だってそれがかなわない奴もいるんだろう?

母親の代わりに生まれ落ちた弟をかかえて、父親までも失った・・・アイツ、とか。


 ・・・は

なに、俺はいきなりアイツのこと思い出してんだ?
なに、急に当たり前みたいにあの、あのときの顔を


「 どうしたんだってばよ?シカマル? 」


そう、コイツの金よりは少しくすんだ色の髪。


「 やっぱり疲れてるんじゃない? 」


サクラより、もっと、こう 深い翡翠の色の、

アイツの、瞳。


ー どんなもんだ −


 ・・・バカか俺は

他里の奴にたかが誕生日くらいで会いにくるわけねぇだろ。
恋仲でもねぇような、俺に。

恋仲? 何いってんだ 俺

・・・やべぇ、まじで

どうなってる。


物足りないのはこのせいか。

そんなの、一度考えちまったら

気になるじゃねぇか。


会いたい、って



「 おい!!シカマル!! 」


突然 火影のところに任務完了報告をしにいってたはずのアスマと、
任務にいってたはずの親父が軽く額から血を浮かばせながら、玄関のドアを壊すかの勢いで入ってきた。


「 どうしたの先生!そんな慌てて・・・ 」

「 話は後だ!とにかく来い、シカマル。 」


・・・は?

そんな今帰ってきたばかりの中忍風情に頼むような事じゃねぇんじゃねぇの?その慌てようはよ。

めんどくせー任務だったらマジで、勘弁してくれよ・・・


「 どうしたんですか? 」

「 ・・・木の葉の里の門外で他里同士がどうやら交戦しているらしい。 」



―ドクン。 ”他里”



「 何ですって?! 」

「 ・・・それが、どうやら片方は同盟国の砂の忍だってんで、応援要請がきたんだよ。 」



―ドクン。 ”砂”



「 砂?!じゃあ我愛羅達んとこだってばよ?! 」

「 ああ、どうやら戦況は不利らしい。砂の忍はスリーマンセル一組で15人と交戦しているらしいからな。 」

「 3人で?! 」



―ドクン。 ”我愛羅達 不利”



「 ・・・そのうちの一人が先ほど里へ駆け込んできたんだ。・・・すぐに息をひきとったが 」

「「 !! 」」

その場にいる全員が息をのむのがわかった。



「 ・・・それでなんで俺なんすか 」

「 火影がそう伝えるように言ってきたんだ。

  ・・・どうやらその班の隊長はお前がいつも案内してる砂の使者のテマリらしくてな 」



―ドクン!!



「 ! シカマル?! 」

「 ちょっと!待ちなさいよ 」

テマリの名を聞くなり飛び出していったシカマルをサクラといのが追う。
それに続いてキバとナルトも家を飛び出していった。

「 ・・・シカマル一人に敵うような相手ではないのだろう。 」

今まで寡黙だったシノが口を開く。当然だ。上忍のテマリが編成するチームが、人数差とはいえ、押されているのだから。

「 それでも アイツは行かなきゃなんねぇのさ 」

そういってシカクはヨシノからタオルを受け取り、額の血をぬぐった。アスマはタバコをくわえなおして方向転換をする。

「 とりあえず、俺は行きますよ。 チョウジ、シノ、ヒナタ。お前らはどうする 」

「 ・・・僕は待ってるよ。多分それが仕事だから。 」

戻ってきたシカマルを迎える役目。確かにチョウジにしかできないな。

「 わ、わたしも行… 」

「 俺たちは行く必要はないだろう。 」

そういいきったシノにアスマは少し驚いて、口に笑みを含む。

そう、シカマルを行かせた時点で、もうそれだけの人数は必要ないはずなのだ。
少人数でも、応援はすでに出ているはずだから。
それでも、シカマルが呼ばれたのは・・・

「 ・・・なかなか いい目、してんじゃねぇの 」

アスマはそうシノに言い残してその場をさる。
シノの後ろで?マークを浮かべているヒナタを除いてその場にいるほかのメンバーは少し、笑った。

「 気づいてないのは本人たちぐらいなもんだぜ、ありゃぁ・・・ 」

シカクはヨシノと目を合わせてうれしそうに笑った。





















― ちっ!


木の間を後ろ手に走りながらテマリは右わき腹の痛みに耐えていた。
とめどなくあふれる血液を、必死で左手で押さえながら、右手の扇でクナイを避ける。


 ( まずいな、血を流しすぎた。 )


めまいがする。さっきの術で少しばかりチャクラを使いすぎた。まあ、そのおかげで敵を4人にまで減らせたが。

他の班員はどうしただろうか。一人は相当な深手を負ったはずだ。・・・もしかしたらもう絶命しているかもしれない。

このまま血を流しながら逃げても無駄だ。
そう考えたテマリは地面へと降りる。

「 なんだ、鬼ごっこは終わりか? 」

こいつら・・・抜け忍の集まりだな。額宛をしていない。
まんまと騙された。



おかしいと思ったんだ。

任務で呼び出されたはずの場所に村はなく、ただの空き家があるだけだった。

空き家に少女がいた。口をふさがれ、手足を縛られている。

見つけた刹那、後ろから班員の叫び声がして、後ろを振り返った瞬間に少女に忍が襲い掛かった。
慌てて方向転換して、少女を背に、扇で刀を受け止めた。

ところが、
少女によってわき腹を深く切られた。いや、刺されたに等しいかもしれない。
熱い液体が飛ぶのを感じたときに確認した。少女はくぐつだった。
これは砂の里のものだ。砂の抜け忍だった。



それからはもう一人の中忍になりたての班員を逃がすために囮になった。
・・・が、初めからこいつらの狙いは私だったようだ。班員を追ったのはわずかに、二人。



まんまとやられた。

「 ・・・何が、目的だ。 」

「 まだ、声を発する力が残っているか。さすがだな、テマリ上忍? 」

そういって覆面をはずした顔には見覚えがあった。

「 お前・・・ 」

我愛羅の風影昇任のときに散々化け物だのなんだのとわめきちらした中忍だ。
やっと認められ始めた我愛羅をあんな風に罵るのが許せなくて、私が上忍試験のときにボコボコにした相手だ。

「 それにしても、あんなところで少女をかばうなんてらしくないな、テマリ殿。 」

「 ・・・ 」

「 木の葉との同盟で甘ちゃんが移ったか? 殺そうと思えば、あの時俺を殺せたろう。 」

そうだな、今までの私なら少女を救うことより相手を倒すことを優先していたかもしれない。
それよりか、刀を受け止めたりせず、そのまま殺していたはずだ。

・・・少女の前で殺しをするのをためらうなど。
そんな甘い考えにいつからおちたのか。

ふいにあの男の顔が浮かぶ。めんどくさそうに半分とじた目つきの悪い顔と、ひっつめた黒髪。
泣き虫で、甘い、木の葉の 忍。


「 所詮、砂は砂。今更いいコぶってどうする?今までどれだけ平気で殺してきたと思っている? 」


今まで忘れていたわき腹の痛みが蘇る。目がくらむ。
扇を支えにしていないと立っていることもままならない。

この痛みはわき腹だけからくるものだろうか。
心臓が、痛い。

握りつぶされてしまうんじゃないかと思うくらいに、痛い。


「 お前は木の葉には触れあえん。 人殺しの血を引いているのだから。 」


その男が一言発するたびにわき腹の傷にえぐったような痛みが走る。
それが全身を駆け巡る。頭が痛い。

母を死に追いやった父。苦しんでいる弟を何度も殺そうとした父。その血をひいている私。


「 人の血が染みこんだ女が、今更 」



ああ、そう。

私は 人殺し だ。


どうやっても、どうしても、あの優しい里とは、

あいつとは、 相 容れない。



































シカマルは誕生日には間に合わせたい…。
でも続きます。

2006.9.18