()(おんな)














断ったのに、一ヶ月だけ!お願い、としつこくて、しまいには泣き出すもんだから、もう断るのも面倒くせぇし適当に受け入れた。
別に好きなヤツがいるわけでもねぇし、特別にくっついてまわったりしないと言うので、まぁいいか、と。
いった通り女は激しく干渉することもなく、時折差入や弁当を持ってきて、時折二人で里内を歩くだけでよかった。だから嫌な気分はしなかったし、特に気にしてなかった。顔もふつーで、まぁそれなりに料理がうまくて、ちっとよく喋るけど、俺が関わらなくても一人で喋ってられるヤツだから苦じゃない。
だからか、一月が過ぎても、面倒で別れを切り出すということをしなかった。というか、自然消滅っぽく自動で終わるもんだと思っていたから、わざわざ言わなくてもいいと勘違いしていた。一ヶ月が過ぎても、女は差入を持ってきて、断るのも面倒だから、やっぱり受け入れてた。





ところが、急な任務だった。

こいつには、なんだかしられちゃいけないような気がして、なんだか悪いことをしているような後ろめたさがあって。正直、女が指定した一ヶ月を過ぎたら終わると思っていたから、こいつと鉢合わせることは無いと思っていた。



「 …奈良? 」


後ろからかけられた思わぬ声に、思わずびくりとした。ゆっくり振り向くと、予想通りの顔があって、眉間には微かな皺がよっていた。
別に悪いことをしたわけではないのに、俺はとっさに「やばい」と思った。隣の女は不思議そうな顔をしながら、袖を軽くつまみ、小声で「誰?」と聞く。その様子をみながら、テマリは女が握るシカマルの腕を見る。そして聡い女はすばやく悟る。



「 すまない、無粋な邪魔をした。 」



そういって、テマリはそのままくるりと方向転換をした。やばい、やばいとなんだかしらないが自分が焦るのに気付く。何故だかわからないが、このままテマリと別れてはいけない気がした。頭のどこか、もしくは胸のどこか奥で警報がなり響くの感じていた。


「 ちょっ、待… 」


立ち上がろうとすると、隣の女がぎゅっと袖を握った。不安げな顔をしてみつめる。
それは一般的に言えばそれなりに可愛らしい行動だろう。相手が恋人なら尚更だ。それなのに、今のシカマルにはひどく鬱陶しく感じた。「ちょっと、悪い」と言って無理矢理引き剥がす。テマリを追って隣に着くが、テマリはこちらを向かない。早足を続けたまま声を出す。



「 何か用か 」
「 いや、ってかアンタ何でいんの 」
「 急な伝達だ。たまたま近くにいたから私が渡された。 」
「 …俺聞いてないぜ? 」
「 知るか、そんなもん。 」



そこまで言ってから、やっとテマリは立ち止まり、じっとシカマルの顔をみた。




「 聞いてないなら来る必要はないだろう。彼女の元に戻ってやれ。 」




「彼女」という言葉をとっさに否定しようとして、慌てて口をつむぐ。



「 あれは、お試しっていうか、だな… 」
「 でも彼女は彼女だろう。いきなり放り出すもんじゃない。 」
「 そりゃ、そうだけど… 」



だいたい何で俺がこいつに言い訳なんかしようとしてるんだ。「女を一人にするな」男の癖に。
そう告げて、またテマリは歩きだした。


その後姿を少しだけ見つめて、シカマルはまたテマリの後を追う。
再び隣にならんだシカマルに、テマリは訝しげな顔を流した。



「 聞いていたのか、人の話を 」
「 女を一人にするな、だろ。聞いてた。 」
「 聞いてたなら… 」
「 今目の前にいる女はアンタだし 」



一瞬ぽとりと思考をおとしてから、屁理屈を、と心の中でテマリは軽く舌打をした。
数歩歩いてから、ゆっくり口を開く。




「 好いている女を放っておくような男だったのか?お前は。
  普段男だ女だいう割には、男として最低な行動だな。 」





好いている女 という言葉を自分で吐きながら、違和感と嫌悪感が胸を渦巻いた。
シカマルを好きだと考えていたわけでもなく、シカマルが自分を好きだと思っていたわけでもなかった。
ただ、久しぶりに訪れたこの里で、久しぶりに会えるかな、と思いをはせたのは
奈良シカマル その人だった。それだけ。


考えてみれば、おかしなことは一つもなく、なんだ、そんなことか、と自分で納得する。
ただ何も変わらないと思っていなかったわけでもないけれど、実際に変化を目の前にすると、それを受け入れるのに抵抗している自分を感じた。
山中でもなく、ましてや自分でもなく、そこにいた「女」という存在。


「 ああ、めんどくせー… 」


そうつぶやいて、シカマルは頭をかきながらくるっと方向転換した。
先ほどの言葉をきいて、彼女の元に戻る気になったか、とひとつ安心のため息を小さく吐くのと同時に、ぐるぐると、得も知れぬ黒いため息が出てきそうになるのを、必死で閉じ込めた。


五代目火影に風影からの急な伝言を伝えると、ご苦労だった。宿はいつものところにとってある。
といわれ、少しでもこの里を、狭く狭く、ただ数人との接点だけで知りえていたこの里の、
自分の最も知っていると思っていた部分が変わってしまったこの里をはやくでたくて、それを断る。
違和感が自分全体を包んでいるようだった。

自分に断り無く、とか考えていたわけではない。
けどどこかでそう、自分の知らぬところで知らぬ女と、と思うと理不尽な苛立ちが自分を支配していくのを感じていた。













「 ― 」

開いた口が塞がらない、というのはおそらくこういう状態のことをいうんだろう。そのまま蜻蛉帰りするように里の門前につくと、門のところには見慣れた黒い髪が見えた。
だからといってそこを通らないわけにはいかないし、何も言わずに通り過ぎるのも不自然すぎるかと思って声をかける。極力自然に。


「 何している、奈良 」
「 お、やっぱりな。もう帰るのか 」
「 まぁな。長居する理由もない。 」


そのままいつもの通り、じゃあなと声をかけて出ようとすると、シカマルはゆっくりと背を預けていた壁から身をおこして、いつもと違う行動をとった。
もう一度声をかけてくる。


「 なあ 」
「 なんだ 」


いつもどおりを心がけた自分を無下にされたような気がして、苛立ちを隠さず短く返事する。
すると男はふっと、ゆるく笑った。


「 別れた 」
「 は? 」


唐突に告げられた単語に苛立ちまで飛び去っていくのを感じた。



「 好きな女のそばにいるために、別れたから 」



そういいながらゆっくりと里内に戻りながら片手を頭の高さにあげて挨拶していく男を見つめて、しばし立ち尽くす。
そしてその言葉の意味を、わかっているのにあえて じっくりと考えながら飲み込む。

歩き始めた足は、妙に軽やかだった。

























五万打ありがとうございました。

リクエストで一番人気だった「シカテマ/恋人未満→←/甘甘」をテーマに書かせていただきました。
作品は心ばかりの感謝をこめてフリーとさせていただきますので、もし気に入ってくださいましたら、ご自由にお持ち帰りくださいませ。
→お持ち帰り用ダウンロードファイル「50000thanks-coe.lzh」(おまけ続編「おいしく甘い食事を君と」付)おまけの続編の方が長くて甘い…のつもりです/笑


皆様に、心からの多大なる感謝と敬意を表して。

2008.11.02  



※五万打感謝のおまけが読めないという方がいらっしゃいましたので、こちらに添えておきます。
おいしく甘い食事を君と(シカ.テマ)