突風地雷















「 ちょっとシカマル聞いてるのー? 」

「 あー…聞いてるっつの…めんどくせぇ 」

両手をポケットにつっこんだまま、まとめて右肩にかけたリュックタイプの鞄が落ちてくるのを
そのまま放置して、足を止める。
横でいのが必死になって叫んでいるのを無視して、下駄箱前で靴をとりだす。

「 聞いてるならちょっと待ちなさいよー! 」

かかとを踏んだまま歩き出そうとする幼馴染のマフラーをつかむと、それは
軽くしまってシカマルの首をしめた。

「 うるせーな。いかねぇ、っつてんだろ… 」

「 ダメよ!!それじゃ私が怒られちゃうじゃなーい! 」

めんどくさそうにふりかえったシカマルをどなりつけていのはマフラーを持ったまま歩き出した。

「 …ってコラ、待て 」

そのまま校内に戻ろうとするいのに引きずられるようにして、シカマルはそのまま靴を脱ぎ捨てて
いのの後を追った。







校内はいつもの放課後の閑散とした雰囲気をかけらも残していなかった。
廊下には床に広がる紙と、ペンと人と、ゴミ。
色とりどりに飾り付けられた各々のクラスの入口には、大体折り紙で作られたわっかの鎖がぶら下げてある。

原因は一週間後にひかえた砂学園との合同文化祭だ。


砂学園はシカマル達の通う木の葉中学の姉妹校で、中高連携型の私立校だ。

何でも今年は高等部の校舎が火事になったとかで、文化祭ができないらしいのだ。
それで、姉妹校でもあり、公立にしてはやたらと規模のでかい木の葉中学と合同で行うことになった、ということである。

まあ、もともと木の葉中学・高校と砂の中高等部の部活は、土日には合同練習している。
なにかと仲が良いのだ。


「 なんで俺が砂の生徒会長にあいさつしにいかなきゃなんねーんだよ… 」

「 仕方ないでしょー?会長今日はいないんだからー! 」


こういうときは普通、きちんと会長がむかえるべきだ。
俺はアスマの先公にサボリを帳消しにしてやるから、って無理やり会計にされただけの役員だぞ?
大体生徒会がどんな活動してんのかもまともにしらねーよ…
色々聞かれてもしらねーもんは答えようねーし。
大体なんで会長が(サスケ)留学とか行っちゃってんだよ。そんなら会長やるなっつの。ていうか会長代理のサクラはどうしたよ?せっかくいるんだから使えよ、代理を。
あーあ、めんどくせぇ…


「 あ、ネジ先輩! 」


前生徒会長、三年の日向ネジ先輩がみえた。
いつもの制服じゃなくてTシャツに、下はジャージだ。
珍しい。

「 あら、奈良くん、いのちゃん 」

前会計のテンテン先輩と前副会長のリー先輩も一緒だ。
テンテン先輩は制服だが、リーさんも今から運動でもするかのような格好をしている。
三年は文化祭には基本参加しないはずだったけど…準備の手伝いでもしてんのか?


「 何かあるんですかー? 」

疑問には思いつつも聞くのも面倒だったシカマルの代わりにいのがたずねると、テンテンは嬉しそうな顔をした。

「 ついてくればわかるわよーv 」

「 あ、でもこれから砂学園の生徒会長さんに会いに行かなきゃ行けないんです。 」

「 あら、それなら一石二鳥よねー、ネジ 」

「 ああ 」


テンテン先輩は嬉しそうにいのの手を引いて、先をあるくネジ先輩とリー先輩の後を追った。
どうやら第一体育館に向かっているようだ。
確か第一体育館は運動部が文化祭で試合体験とかやるっていってたんじゃなかったけか。
第二体育館は確か文化部と有志。バンドやるってキバがはりきってたもんな。(シノがベースでボーカルがヒナタってのが気になるところだが。)


「 試合でもやってるんですか? 」

「 うん、まーそうなんだけど 」

テンテン先輩は言いながらネジ先輩が開けた第一体育館の扉をのぞいた。
それにつられて俺とイノも中を覗き込む。


中では砂の生徒とうちの生徒が練習試合をしてるみたいだった。
うちの生徒のチームだけ男女混合じゃねーか。…てか砂の方は高等部で年上だからハンデか。


その中でひときわ目立つ、女がいた。

特徴的な、四つに結んだ髪を乱して、ボールを今、まさに奪い取って、
一人駆けていく。
味方のゴール前でうばったボールを、そのまま敵ゴールへむかって、まるでさえぎるものなんてみえないかのようにかけていく。
一直線に、まるで風のようにうちの生徒をすりぬけて、まっすぐ、ゴールへ。
目が、離せない。

そのままシュートするのかと思ったらゴール直前でフェイントをかけて仲間にパスした。
あのままいっても十分シュートできたのに。
…シュートするところを、見たかった。少し、惜しい。


…ん?惜しい?

何言ってんだ、馬鹿か俺は。
シュートを決めた仲間とハイタッチをして、満足げに笑ったその女から
俺は神経を遮断されたように目が離せなくなっていた。

ふと、女はこちらを見た。
びくっとした。覗き見してるのを見られたような、そんな罪悪感と、
単に見ているのを見られた、っていうことから来る恥。

別に女は俺だけを見たわけではないのに。


「 ネジ!テンテン、リー! 」


女はタオルを首にかけたまま走ってきた。
やべえ、やべえ。
こっち、くるぞ。


「 テマリー!! 」


テンテン先輩が大げさに根元から腕を振って、その、テマリと呼ばれた女に抱きつく。
抱きつくというよりは飛びつくに等しかったが、テマリという女はなんなくそれを受け止めた。


「 久しぶりだな、元気してたか? 」

「 ああ 」

「 テマリさんもお元気そうで何よりです。 」


ぽかんとしているいのと俺を無視したまま、彼らは一通りの挨拶を終えた。
(その間も始終テンテン先輩はテマリとかいう人に抱きついていた。)



「 そっちは? 」



その女の声がこちらに向けられたことに、俺はらしくもなく驚いた。
そして、少し緊張した。

少し低めの、強い、声。
その強い目によくあっていた。


「 あのっ…木の葉中学生徒会副会長の山中いの、です。 」

いのも少し緊張しているようだった。
俺たちとは、違う。なんだか少し大人な匂いを漂わせた、その女は汗ではりつく髪も気にせずに
「ああ」と笑って、手を出した。


「 私は砂学園高等部の生徒会長、テマリだ。よろしく。 」


出された手を握って、いのはいのとは思えないくらい潮らしく笑った。
あー…あとできっと「かっこよかった」とか「綺麗な人だった」とか言って話を聞かされるんだろうな。



「 で? 」



イノとの握手がおわると女はこちらを向いた。
強い目に、また心臓がどきっとする。
違う、べつにドキッとしたのは高等部の生徒会長、って思って少し緊張したんだ。
きっと、そうだ。


「 ほら、シカマル! 」

「 あ、ああ。会計の奈良シカマルっす… 」

軽く頭をかきながら会釈すると、女は俺にも手を出した。

「 よろしく、奈良。 」

「 あ、はぁ… 」


差し出された手を無視するわけにもいかず、俺は気づかれないように手のひらを少しズボンで拭いてから
その白い手を握る。(よく考えれば運動したばかりの女の手のほうが汗をかいていただろうに。)
思ったより、柔らかくて、小さかった。

よくよく見れば、でかいと思っていた女は俺と大して変わらないくらいの背丈だった。
いや、女としてはでかいのだが、俺よりでかいと思っただけに少し意外に思った。
コートの中でアレだけ目立っていたから、無意識にでかいもんだと思っていた。




「 それで、ネジ。今日は相手してくれるのか? 」

ネジ先輩の方を振り向きながら俺の手を離した。
その手が少し名残惜しかったのも、少しだけ握り心地の良い、形をしていた から。だけ、だ。


「 そのつもりだ。 」

「 お、珍しい。じゃあ気が変わらないうちに、早速頼む。 」

「 休憩はいいのか 」

「 あれくらいで疲れちゃいないよ。 」


女はそういったが、他の部員はそれぞれ思い思いに休憩をとっている。
女は少し考えてから俺たち全員を見渡した。


「 テンテン、お前も久しぶりにどうだ。 」

「 えー!無理無理!スカートの中みえちゃうもん〜 」

「 …なんだ、つれないな。リー、やるだろう? 」

「 ぼ、僕ですか? 」

「 後一人足りないな… 」

女は少し考えて、回りを見渡した。

「 カンクロウ! 」

女がおもむろに体育館の隅に向かって叫ぶと、カンクロウと呼ばれた男が走ってきた。

「 なんじゃん、テマリ 」

変わった口癖の男は意図も簡単にテマリを呼び捨てにして、肩にまげた肘を置いた。
女の方は満足げに胸の前で腕を組む。

「 お前も入れ。これで6人だ。 」

多分この女は三人対抗のゲームをやろうとしているのだ。
そして、俺といのは許可を取ることもなく、強制参加。
なんだか、この女には逆らえない気がした。(リーさんがいい例だ。)

「 って、私もですか?! 」

いのが驚いて声をだすと、女は満足げにうなづいた。

「 大丈夫だ、ハンデはつけてやるから。 」








結局、こうだ。

テマリという女、もとい、砂の生徒会長はもともとネジ先輩との対戦を希望したのだから、もちろんネジ先輩と砂生徒会長は別チーム。
いやに砂生徒会長と親しげなカンクロウという男はもちろんテマリチームで、女のバランスを考えてか、いのはネジ先輩のチームに。
問題はリーさんと俺の行き場。

「 …そうだな。いつもなら別に4対2でもかまわないのだが…今日はネジもリーもいるし…何より 」

ぼけっとしていた俺のほうをふりかえって女は意味深に笑った。


「 …ダークホースがいるような気がするから、リーはもらおう。 」


…へ。

なんだよダークホースって。俺か?俺はバスケなんてやらねーぞ?
第一アスマに無理やり入れられた将棋部に所属ってだけで砂とは面識ねーし、
どうみたって運動神経がいいようにはみえねーって大抵の人間から言われるんだぞ?(本当は結構いいほうだ。)

だけどその、…なんだ。
期待しているような、楽しそうな、その女の顔をみたら

なんか楽しくなってきたじゃねぇの。








「 ハンデだ。そちらからでいい。 」

全員が適当にビブスを装着したところで、女がいのにむかってボールを投げた。

「 リー、こちらの人間じゃないからって手加減するなよ 」

「 そんなことはしませんよ!!青春は何事も全力投球です!! 」

女はゴール前にいるリーさんにいうと、リーさんはその通り目に炎を燃やして(るかのように)力いっぱい言った。
そして女は答えに満足したのか、カンクロウという男に目だけで合図すると、男はうなづく。
…随分と仲がいいんだな。


「 本気で、行くぞ 」

「 望むところだ 」


ネジ先輩が女と向かい合う。
女はコートにたってビブスをつけたときから確実に目が、違った。

あの 目。



「 ボケっとするなよ、ダークホース。 」



いつの間にか女は俺の前に立ってデコピンしてきた。俺が何か言い返すまもなく、すぐポストに戻る。
…ちょっと、マジで痛かったんですけど。


< ちょっとー、シカマルどうしたらいいのよー >

< とりあえず、ボール拾ったらすぐまわせ。後は走ってりゃいいから >


目で訴えられて、目で返す。…て、さっきの女と同じじゃねーか。





「 じゃあ、スリーオンスリー…開始ッ!!! 」


テンテン先輩が何処からいつの間に持ってきたのか(あの先輩はよく、どこにもってたんだ?!ってほどのものをどこかに隠している。)
笛をピッとふいて、いのがボールを持ったままおろおろしている。


しゃー、ねぇな…。めんどくせぇが、ネジ先輩もいることだし、まぁ運動神経には悪いが自信あるんでな。
男が女に負けるわけにもいかねぇし。


いのに目で合図してから、俺の前にいたカンクロウって男の横をすっとすりぬける。
右に出れば、体はでかいがそんなにはやくはない。
そのままいのが投げたボールを受け取ろうとした、

そのとき。


「 わっ 」

ボールに目がいってた俺は全く気づかなかった。
いきなり目の前に黄色がみえて、鼻先を少し硬い髪と、汗と、甘い匂いがかすった。


「 悪いな 」


一瞬だけ振り向いてその女はふっと笑った。
それに一瞬、俺は脚がすくむ。

「 リー!! 」

女がリーさんを呼ぶ声で俺はハッとして、あわてて足をもつれないように返す。
顔を動かすのと同時に、女が放ったボールをとるリーさんがみえた。
俺がふりむいたときには女はもう俺より先に行っていて、また視界に女の後ろが見えた。

まさに、風のようにすり抜ける。




…させるかよ。


リーさんよりゴールに近い位置にたった女が、飛んでボールを受け取ろうとする。
それを、女より高く飛ぶことで、悪いが横取りさせてもらった。

女の頭上でボールをとった俺に、女はひどく驚いた。
その、綺麗な色した目を見開いた。それに俺はなんとなく満足してニッと笑う。
そのまま、着地する前に横にほおる。

さっきの合図で移動させたいのがボールをつかんで、そのまますぐに投げる。
リーさんのマークを軽くかわしてネジ先輩がそれを取った。



「 ちっ―!! 」

女は着地するなり踏み出そうとしたが、その前に立つ。



「 悪いが、アンタは俺がつかせてもらうぜ 」


「 …やるじゃないか、会計くん。 」



女は笑って、俺を抜けようと動く。
それにあわせて俺も動く。
いかせねぇよ。…絶対な。



「 カンクロウ!! 」

女がふいに叫ぶ。おそらく、絶対とめろ!っていうプレッシャー。
一番背が高いカンクロウという男は、ネジ先輩がシュートしようとするのと
同じように飛んだ。
男を避けようと無理なフォームと角度で放たれたボールは、ゴールネットをくぐらずに
はねかえって落ちる。



「 くっー!! 」


ネジ先輩がリバウンド狙うが、カンクロウという男とリー先輩の徹底マーク。

すると女は、フッという音をだして、笑った。




「 …ダークホース、 」




少し、低い、耳障りのいい、声。
しかし今発せられたその声にはほんとに、少し。ぞっとするような、見透かされたような、そんな声色が含まれていた。
その声に反応して俺が女の顔をみると、女は強い 目で、強い 笑みで、強い、声で。

俺はマジで、呪文でも唱えられたかと思うくらい、動けなくなった。



「 風は、好きか? 」



ひとときの間があって、俺が答えるよりも、速く、女は俺の横をすり抜けた。
女が通り過ぎるのと同時に動いたのでかいた汗と、何だかわからないが
久しぶりに必死になっていた、という全身から湧き上がる熱に、心地よい

風が、ふいた。



俺が我に返った時には、時すでに遅し。といった感じで。
すべてがスローモーションで、
すべてがモノクロで

だけど、女だけが

色鮮やかに、

舞った。





ダァン――!!!





あっという間に俺の横をすり抜けていった女は一瞬だけ床についたボールを
まるで吸い付けるようにひろって
そのままステップでも踏むかのように
一度回るように飛び上がって
ボールはゴールネットへ
吸い込まれた。

ふりまかれた汗が、キラキラと照明に反射して

まるで、テマリ自身が輝いているみたいだった。



「 さすがだな。 」

「 いや、リーが味方だったしな 」

「 そんなことありません!さすがです!テマリさん!! 」

「 ちょ、…超かっこよかったです先輩!! 」

「 いやー!!さすが私のテマリ!!ネジのシュートもちょっとみたかったけど(小声)
  かっこよかったわー!! 」


みんながわっと、集まって。
さっきまで緊張してたイノですら目を輝かせて女に駆け寄る。
だけど、
そんなん
まじで頭の遠いところで
聞こえてて。





トン、トントン…


落とされたボールが足元に転がってきた。
右足に当たって止まる。


や、べぇ…


シカマルは手の甲で口元を覆うように隠す。
できるだけ、顔が隠れるようにうつむいて足元のボールを見つめる


…マジ、で…



顔が、あつい。 のは

動いたせいでも、なんでも、なく て。

俺は

かっこよすぎる女に出会った。


出会って、しまった。





















「 ダークホース。 」

「 あ、ああ なんすか 」

ぼぅっとしていると、急に話かけてきたもんだから、驚いてどもっちまった。
挙動不審みたいじゃねぇか。いのにばれたらからかわれるに違いねぇ。
めんどくせぇ…


「 お前手を抜いたろう。 」

「 抜いてないっすよ。コレでもマジで… 」

「 いや、あのときお前は私を止められたはずだ。 」


何を根拠にこの人は言い切るんだろうか。
その強い目には迷いも疑いもなく、まっすぐ俺を見ている。
…ったく、どこからそんな自信が出てくるんだか。
まぁ、悪い気は、しねぇ けど。


「 この勝負には納得がいかん。再戦、といいたいところだが… 」

「 ? 」

「 今日は、時間切れだ。 」

「 … 」

少し、残念に思ったのはマジで、気のせい…であって欲しい。


「 またな。会計くん。 」

「 …あ、はぁ… 」




嵐が、去った。

















「 テマリさん超、かっこよかったー!! 」

生徒会室でチョウジの首を絞めながら叫ぶいのに、めんどくせぇって返すこともできなかった。
だって、


「 ねぇ!シカマル!!超かっこよかったよね!! 」


目を輝かせて同意を求めるいのはこれまで何度も見たが、
俺は同意したことがあるのかどうかよく覚えちゃ、いない。


だが、こればっかりは



「 …まァ、な… 」



マジで、否定できねぇ。


















































おまけ。


「 そういえばテマリさんってバスケ部員じゃないんだってー 」

「 …は?! 」

「 たまに練習に呼ばれてやる程度なんだって。すごいわよねー!それであんなに強いんだからッ 」

「 …マジかよ… 」


俺ってもしかして…

超、めんどくせぇ地雷、ふんだんじゃね?






ソラコ様遅くなってすみません。1111キリリクありがとうございます。
どこから書き出せばいいものか迷っていたらこんなに長くなってしまいました。;
「学パロ」ということで、いつもと少し違った感じの文章にしてみようと思ったのですが…失敗。
ちなみに少ーし原作の中忍試験を意識して書いてみました。…個人的にほんのわずかに、ですけど。
シカテマというよりシカ→テマという感じですね。しかもところどころネジテンっぽいとこもあったりして。
…もうしわけありませんでした!!まだ学パロ書けるほど文章力がありませんでした…。
できたらまた書いてみたいな〜と思います。
そらこ様のみ、お持ち帰りなどOKです。お好きになさってください。

2006.9.07