”て まり”














「 そーいやぁさ、 」

中忍試験の参加者名簿を整理しているときだった。
準備室で四方に一人ずつ、四人しか座れない小さなテーブルに向かい合って黙々と作業していたシカマルは、書類を見つめたまま声を発した。

「 我愛羅は漢字なんだな 」

突然の突拍子もない話に少し間をおくと、シカマルは書類から顔を上げて、テマリをみ、「昔の名簿にお前らの名前みつけたから。」と言った。

「 ああ、あれは母の最期の主張だと聞いている。 」

「 …あ、 」

「 かまわん、気にするな。」

テマリは手元の書類をまとめて一息ついてから、続けた。

「 砂では漢字はあまり重要視されていないからな。

  あまり漢字を使った名前の者はいない。大名とか貴族のいいとこのやつらくらいだな。

  実際私も少し学んだくらいであまり知らない。 」

「 ヘェ 」

「 そういえば、”シカマル”は漢字だとどう書く? 」

「 あーーと、多分こうだな 」

そういうと、いらない紙の端に”鹿丸”と小さく書く。それを覗こうと、身を乗り出したテマリと自然と距離が縮まった。
ふわり、と石鹸なのか香水なのか、はたまた彼女自身の香りなのか、いい香りがした。

「 ぷ、そのままだな。 」

おかしそうに小ばかにする顔を、こんなに近くでみるのははじめてかもしれない。
「るせー」と返しながらも、テマリが紙を見つめたままなのをいいことに、テマリをみつめていた。

「 では、私は? 」

急に彼女が顔をあげるものだから、ほんの10か20cmくらいの距離に、ひどく動揺してしまった。
それを悟られないように、冷静に紙に字をのせる。

「 っと…”テマリ”か…これとか 」

そういってシカマルが書いたのは”手鞠”という字だった。

「 どういう意味だ? 」

鞠という字を知らないのか、テマリは指を指しながら再び顔をシカマルに向ける。
ちょっと困ったように椅子の背もたれにもたれることでテマリから顔を遠ざけて、何でもないというようにポーカーフェイスを保つ。

「 まり、っつう古い遊びだな。小さい女の子が遊ぶ…。確か、いのが持ってたな。 」

「 へぇ…いつか見てみたいな。 」

「 あんたのいつかは本当にいつか、になりそうだな。 」

「 まぁ、そうそう時間が出来るものじゃないしな。砂にはそんなものないし。 」

「 あーあ、めんどくせー… 」

そういうと、シカマルは立ち上がる。どこへいくんだ、というテマリに、気分転換、といって部屋をでようとするのを、テマリはあわてて追いかけた。



「 ホレ。 」

気分転換先はいのの花屋。突然の話に驚きつつも、いのは倉庫から鞠を引っ張りだしてきてくれた。
色とりどりのそれは、とても美しくて、

「 …綺麗だな。女の子の遊び、か。私の名前にはちょっと不釣合いな字だな。 」

両手で大事そうに鞠を抱えたまま、そういうテマリは夕日を浴びて少しオレンジに染まった。
シカマルはおもむろにテマリの手から鞠を取り上げる。

「 やってみれば? 」

「 え 」

こうやってつくんだよ、と数回見本を見せると、鞠をテマリの手に戻す。
経験したことのない遊びを、いや、幼い頃にこうして遊ぶなんてことを経験したことがないテマリは、珍しく戸惑っているように見える。
シカマルはその様子をみながら、また少し笑う。
笑われたのが気に食わなかったのか、テマリは鞠を片手にもって、体制を整える。

落としてみたがうまく弾まず、もう一度、今度は少し強くたたきつける。
すると、手元まで戻ってきたので、もう一度うつと、今度は自分から大きく離れた方向へ転がっていってしまった。

「 ぷ、へたくそ 」

「 う、うるさい!やったことないんだから仕方ないだろ! 」

夕日に加えて、恥ずかしさからか顔を赤くしたテマリを、正直に可愛いと思った。

「 なつかしいわねー! 」

転がった鞠を広いあげて、いのは鞠つきをはじめた。


  まーるたけえびすにおしおいけ〜


上手に高く、すんだ声で歌いながらリズムよく鞠をつくいのを見つめて、テマリは小さくつぶやく。



「 …やっぱり女の子、って感じだよな、いのは。可愛いし、声も綺麗で、 」



その声があまりにもいつもの強さをもっていないものだから、シカマルは思わずテマリをふりかえる。


「 そ… 」


小さく言い返そうとして、やめてしまった。この先の言葉を今彼女にいってやれれば、どんなによかっただろう。
しかし、俺にはまだ、そんな勇気がなかった。


少し近づくだけで、動揺したりとか、

ふとしたときに見せるしぐさだとか、

実は細くて白い体だとか、

いい香りのする髪だとか、

綺麗な翡翠色の瞳だとか、

そういう、切なそうな顔だとか、

影真似でもかけたみてーに、動かなくさせるその笑顔だとか



俺にこんなにも女を意識させるアンタだって、十分立派に女なんだ。








「 さって、そろそろ書類あげねーとヤバイな。 」

「 は、しまった!日が暮れてしまったじゃないか!

  お前がいきなり息抜きとかいって中断するからだぞ!! 」

「 もう続きは明日やろーぜ 」

「 〜…今日中に終わらせて明日は木の葉を見てまわるつもりだったのに… 」

「 はやく終わらせて午後にまわればいーじゃねーか。めんどくせーけど付き合ってやるよ 」

「 なんだ、随分と珍しいことをいうじゃないか 」

「 ま、俺のせいらしいしなー 」


アンタといるとめんどくせーことが増えて困る。
だけどそんなメンドクセーのもやりたいって思っちまうあたり、俺も重症だな。


いつか綺麗な鞠つきをするテマリもみてみたいけれど、
そのままの、今の君が一番だから。

鞠つきも、気持ちを言えないのも、思いを隠すのも、悩みを自分の中にため込むのも。
そんな不器用なところもあるような人だから。
それを支えてやれる、男になりたい。



















































メイ様遅くなってすみません。キリリクありがとうございます。
リクエストは【 とにかくシカテマ! 】でした。
なのにシカ→テマになってしまって…すみません。私の中でシカテマはシカ→テマが根なので…汗
でも書いてみたかったネタなので、個人的にはとても満足です。ありがとうございました!

2007.01.13