さえぎる雲。














「 随分甘かったじゃん? 」

「 うるさい 」






―――ギブアップ。 


くそッ あの男・・・



「 なめやがって・・・ 」



ギリリと唇を噛む。血の味がにじんだが気にならなかった。






風影の長女として幼いころから修行に励んできた。
同期の男にだって負けたことがない。
一度やりあった3期上の中忍にだってそんなに苦労せずに勝てた。


負けるなんて。このあたしが。
甘くなんてしていない。むしろ、本気でいったはずだ。
なのに、負ける なんて。


しかもあんなやる気のない年下のアホ顔に。



「 ・・・くそっ 」 



・・・この後の作戦さえなければ、必ず再戦を申し込んでやるのに。
ガンと壁を殴ってその場を離れる。我愛羅が下に下りていくのを見送ってから。


( 危険だな・・・このままじゃアイツがあらわれかねない。)


あの化け物にはちあわすのはごめんだ。・・・弟でも、恐怖を感じるものは感じるのだ。






しばらくするとあの金髪馬鹿の叫び声とともにアイツが上に上がってきた。
・・・どうやら我愛羅が途中でなんかしたみたいだな。殺されなかったのは運か。






「 おい お前 」


金髪バカが試合に熱中してるうちにあたしは迷わずあの男に話しかけた。


「って うわ、なんだよ 」


男はたじたじになって一歩さがる。確実にびびってる。
・・・こんな奴にあたしは負けたのかと思うと腹が立つ以前にむなしくなってくる。



「 なぜ ギブアップした 」

「 言っただろ、チャクラ切れだって。メンドクセーな 」



男は本当にめんどくさそうに頭をかいた。・・・むかつく。
しかし、確かに私はこの男に負けた。いくらチャクラ切れとはいっても、だ。


「 あんな勝利は納得いかない。アレが実戦なら確実に私は殺されていた。 」

「 実戦じゃねーんだからいいだろ?納得いかないとか言って再戦とかいうなよ?メンドクセーからな・・・ 」




「 ・・・本当に木の葉の忍というものは甘ちゃんだな。 」

「 あ? 」


浅く笑った顔は見られていなかったようだ。
そんな実戦じゃないとか言える、そんな木の葉の里が正直なところ少しうらやましい。


「 ・・・そうだな、できたら再戦したいものだ。 」

「 だからやらねーって。メンドクセー・・・ 」

「 ・・・ああ、だから、できることなら、だ。 」


そういって今度は奴にも見えるように笑って見せた。
奴はひどく驚いた顔をしていたな。・・・うまく、笑えなかったようだ。


二度と会うことなど、ない。これからこの里を襲撃するのだから。

この優しい、優しすぎる里を。 訪れることはもう、ない。

このアホ顔をみることも、

もう 二度と、














そう思ってた。

「 砂の、忍だ。」




空を見上げるアイツの横顔を、見ることになるとは思わなかった。

「 あー・・・なんつーか・・・ありがとな 」

「 言っただろ、任務だ。」

「 一応だよ、結局守られちまったしな 」

アイツは泣いた顔を見られないようにか、私の数歩前を歩き始めた。

丁度、真正面から風がふいた。 アイツにさえぎられて私に風は届かない。




そう、もし私がここから風を起こしても、

アイツにさえぎられて、風は前へ、届かない。

雲の影が移動する。風が、やむ。




奴はふりかえって どうした、と聞いた。

そのときになって私はやっと、自分が立ち止まって奴の背中を見つめていたことに気づいた。






ああ、何か。






あまり好きじゃない、影が妙に心地よかった。






























こっちもまだ恋までいかない感じ。ちょっと気になる程度。
自分をはじめて負かせた相手(しかも年下)としてちょっと特別視。

2006.8.01