可愛い
自分も、当たり前のように「女」であったと思いしらされることがある。
それは例えば力やリーチの差をつきつけられたりだとか、色物に近しい任務だったりとか、ほんの少しの性差意見だったりとか。
決まってあまりいい気分のするものではなくて、何故自分は女として産まれてきたのだと、うとましく思うことも多々あった。風影の長子である以上、男であるほうが何事においても最適であり、とっかかりもおきずに進むこともあったろうに、と。
だがしかし、今そんなことをとやかく言ったところでどうなるわけでもないし、テマリは最近、自分は単なる身体的構造のみにとどまらず、まるで俗物のような思考で、「女」であったのだなぁ、と感じることがあるのだ。
今がまさにソレだ。
くるりと向いてしまった黒い背中を、引き止めたくて仕方なくて。
しかし天邪鬼な足は、一度じだを踏んで、そのまま鉛のように地面にはりついてしまっている。
いつの間にやら自分より一回りも二回りも大きくなっていた背中に、しがみつきたいとは思わないけれど。
自然と気持ちと一緒にあがってしまったテマリの手は、見つめる背中にいかないように戻しかけて、そっと彼の袖を掴んだ。
「 …何スか 」
自分でもほぼ無意識の状態で行った行為に、理由を問われても出てくるハズもなく。
だからといって、袖を握る自身の手に感じる視線をそのままに、手を離すこともできない。
あ、とも、う、ともでないまま、テマリの口は開いて固まって、自分の視線も自身の手にゆき、それと同時に頭もさがって、さらに視線は下へ行く。
シカマルは、そのままうつ向いてしまったテマリの、指から頭へと視線を移動させる。かすかに見える耳が段々と赤く染まっていくのが見えて、少し笑ってしまいそうになった。
−可愛い。
素直にそういう感情をこの人に抱くようになったのはいつからだろう。
少なくとも、あの時は ただ、カッコイイ女だと思った。怖くて、強くて、そして、
いや、あの時から
可愛くて、男前な女だと
「 はぁー… 」
くるりとコチラを向いて、頭上で聞こえたため息に、少しドキッと、そしてムカッとして、思わず顔を上げると、強い漆黒の目と会った。
ドクン、と強く心臓がなるのがわかった。顔が、さら熱を持ってゆくのも。
この目に、弱い。
私がいつも必死に言わんとしていることを、引きずり出してしまうような、そんな深い、目。
いつも言えずに飲み込むことを、言わせてくれる、優しい、黒い目。
テマリがゆっくりと声を出そうと口を開きかけると、それを待っていたかのように一度まばたきをして、シカマルが先に声を発した。
「 まだ時間、あるから。 」
そういって、シカマルはいつの間にやら広くなった胸に、すっぽりとテマリをおさめる。
こういう時 大人なのか、子供なのか、わからないこの男の、深さを知る。
「 …何も、言ってない。 」
「 目が、言ってる。 」
苦し紛れに言った言葉に、即答された上、くすりと笑われたのが悔しくてテマリは服を握った手に力をこめた。
皺がのこってしまえばいい。そして私と別れたあと、皺をみて私を思い出せばいい。
そんな風に思う私は、妙に女臭くて、自分で否定したくなる。
「 アンタさ 」
しばらくそうしていると、シカマルはひとつ小さくため息をついて「年上の頭に手をおくな」といってはらわれる手を、あえてテマリの頭にのせた。
ポン、とひとつたたいた手を、やはりパシン、とはたかれる。
「 何だ 」
長い沈黙に、テマリが少しいらだったように顔を上げた。そこでまた、翡翠の目と向き合う。
「 結構 甘えた、だよな 」
そういうと、しばらく意味がわからなかったのか、テマリはぽかんとした顔をして、急にキッとシカマルを睨んだ。シカマルが、あ、と思ったときにはもう思い切りドンッとつきとばされた後だった。その勢いがあまりにも強くて、予想はしていたものの、思わずしりもちをつく。
「 馬鹿なことを言うなっ…!誰が… 」
「 いてー…; 」
「 ふん、それくらいでしりもちをつくなんて、反射訓練が足りないな。 」
「 つきとばすことねーだろ、めんどくせーなぁ… 」
「 お前がヘンなことを言うからだ! 」
そういって部屋へ向きかえってしまったテマリの耳は、やっぱり真っ赤で。
それをみたシカマルは、しりもちをついたまま、また思わず笑ってしまう。
「 何がおかしい! 」
「 いや、別に 」
アンタがこんなにも可愛い、なんて。
誰も知らないでいい。
俺だけの特権で。
女であってよかったと、少しだけ思うようになった事、絶対コイツには一生言わない。
と、テマリが心の中で誓ったことを、
シカマルは知ってか知らずか、ふっと、いとおしそうに目を細めて笑う。
そしてまた、ゆっくりと彼女を抱きしめた。
不器用な、甘えん坊さんを。
朋サマ、大変遅くなってしまって本当に申し訳ありません!
拙作ではありますが、相互SSとして捧げさせていただきます。朋サマの素敵絵のイメージで書かせて頂きました。
自分史上最大に甘くなったような気がするのですが…何か は、恥ずかしい…!//
ありがとうございました!
2007.12.22 ![]()