香りと匂いと臭い















あ、この臭い。

「 白眼!! 」

普段より少し低めに出した声がする。多分俺と300mくらいしか離れてないからすぐ気付くだろう。

「 あ… 」

そのまま直線に走り続けて、そろそろ見えてくるだろう背中を想像する。
いや、気付いているのだから背中ではなく、特有の白い瞳が見えるかもしれない。
ザザッ…赤丸とほぼ同時に木から飛び下りる。しかしそこに予想していた姿はなかった。

「 あれ?おっかしいな〜…確かに臭いしたんだけど… 」

臭いだけでなく声だって聞いたのだから、このあたりにいたのは間違いないはずなのに。
思っていた姿がみえないというのはひどく気分が悪いものだ。無償にイラッとくる。

「 …チッ… 」

していたはずの臭いはいつのまにか消えていた。ほのかに残る香りを存分に吸い込む。
消えかけていた匂いをできるだけ吸いとる。ここに残しておくのはもったいない。
そう思ってちからいっぱい淡く感じる香りを。
いつもは嫌いだと思うくらいなのに、今はとてもいい香りに感じる。

最初はそれなりにいい匂いだと思っていた。
だけど一緒にいるうちに、ある日を境に、段々その匂いが嫌いになっていくのを俺は感じていた。

いや、嫌いになっていたわけではない。
臭い自体は俺が好きなタイプの甘すぎない、植物系のいい香りだ。
ただ、あいつがこの匂いの先にいると思うと、無償にイライラしたり、はやく行ってこのイライラを怒鳴ってあたりたいような、
だけど行きたくないような、意味の分からない自分でも理解しがたい気持になった。
だから自然と、鼻に優しいこの香りを自分は実は嫌いなんだと思うようになった。

嫌いなんだ、嫌いなのに。
かいでいたいような、これ以上自分のなかに含みたくないような複雑な思いで。

…あぁ、イライラする。
なんでいないんだ。さっきまでいただろ。
白眼つかってたなら俺がくることにだって気付いたんだろ。
なのに。

なんで、いない んだ。
急いでたとしても、俺がくるんだからもう少し待って一言挨拶するだけでもいいじゃないか。なんで、いない。


あぁ…イライラする。
思いっきり吸い込んでいたら、遥か遠くに微かに匂いを感じた。
だけど、さっきみたいに一直線に走る気にはなれなかった。
歩きだそうとする赤丸が俺を見上げているのを左の頬に強く感じるが、俺は真っ直ぐ臭いの方向をみつめた。

…ああ、わかった。

あいつの香りは好きだけど、いつもあいつの匂いと一緒にナルトの、臭いがほのかにするから、イライラするんだ。
いつも持ち歩いてるナルトにもらった包みから、ナルトの臭いがするんだ。
俺の好きな匂いにまざって、違う臭いがするからなんだ。あいつの中に、ナルトがいるからなんだ。

いい匂いがする。
いや、臭いが変わったわけではなく、今までと同じ臭いだけど、俺が心地好いと感じるようになった。
さっきまではイライラしていた気持ちがすっと胸にはまっていった。


あいつの中のナルトの臭いを消したい。
そう思う。
いつだって隣にいるのは俺で。シノよりも俺で。ネジよりも俺で。ナルトよりも俺なのに。
あいつからはナルトの臭いがする。
あいつの心からはナルトの臭いがする。

ナルトの臭いが嫌いなわけじゃない。
ナルトが嫌いなわけじゃない。

だけど、
ああ。

あいつの中にいるから、嫌いになる。

あいつの匂いとまざる臭いなんて、嫌いだ。

そう、あいつの

中に



「 …あ 」

考え込んでいたらいつの間にか目の前にヒナタがいた。

お前、わかってんのか。
俺は今お前のこと考えてたんだぜ?


「 キ、キバくん…あのね、 」

「 あー?別にいいって、ナルトのとこ行ってたんだろ?
  ゆっくり話してくればいいじゃねぇか 」

違う。

そんなことがいいたいんじゃなくて。
本当はいやなくせに。
ナルトの臭いと一緒の、ヒナタの匂いが嫌いなくせに。

「 あの、ちが、くて… 」

ヒナタはもじもじしたかと思うと、ヒナタにしては珍しく大きな声をだして
俺にむかって何かを両手と共に差し出した。

「 これ…!腕、けがしてる、から… 」

両手につつまれていたのはいつもナルトに差し出していた塗り薬。
言われて見れば俺の右腕には切り傷があった。どこでつけてきたんだろうか。
痛みすら忘れていた。

お前のところに急ぐのに一生懸命だった。

あ、


「 な、ナルト君に貸してた、から… 」


そう か。


「 返してもらいにいって、て…それで… 」


しどろもどろになって涙眼になってきたヒナタを、

俺は思わず抱きしめた。

気づいたら、止まらなかった。



「 き、キバくん…?! 」

「 サンキュー!ヒナタ!!これ超痛かったんだよ!! 」


真っ赤になるヒナタなんか気にしないで、一回強く抱きしめて、俺はヒナタの手から薬を受け取って
また森へと走り出した。

そうだ、コレがいつもナルトの匂いをさせてる包みだ。

痛かった。

腕より胸が。

なんでかわかんなくて、余計痛くて

でもなんともしようがなくて

ああ、わかった。わかっちまった。



俺は お前が 好きだ。

好き なんだ。



















































ソラコ様遅くなってすみません。3000キリリクありがとうございます。
リクエストは【 恋に気づいた犬塚・キバヒナ 】でした。
とても楽しんで書かせていただきました!やっぱり犬塚といったら匂いだろう、と安直な考えで書いてみました。
本当は最後好きと気づいた瞬間に告白しちゃいそうだなーと思ったのですが、その後が面白いのでやめときましたv笑
そらこ様のみ、お持ち帰りなどOKです。お好きになさってください。

2006.10.16