−拍手お礼小説−





その声が
まるで泣いているようだったから


「 ― 」


病室で横たわるその人の、状態がよくないのなんて誰がみても一目瞭然で。
自分だってそれにもれることなく頭が嫌だと信号を発しても、まるで無視するかのごとく理解してしまっていた。

この人は、今、生きるか死ぬかというところに立っているのだと。
否、むしろ生という崖に必死で喰らいついているのだと。


「 …死ぬな 」


頼むから、
そう思うしか、願うしか、頼むしか待つしか、でき なくて

空を掴むように優しく握った冷たい彼女の手が、ただひたすらに、だらりと垂れ落ちてしまわぬように自分の額に当てている。雨が、今は大した量でもないというのに、ぼつ、ぽつ、とうるさく、無遠慮に窓をたたくのも、ひどく鬱陶しかった。

ぴくりと微かに指が震えたのを逃すことなく握った手に力をこめると、その目が、うっすらと半分だけ姿をみせた。

声に出そうとして、声がでなくて、代わりにその目が小さく笑ってみせたような気がして、絞り出す声もないまま、うなだれた。
少しだけ自分の意思で起きている手の抵抗感にひどく安堵する。

生きている。今、彼女には血が通っている。

相変わらず白い手は冷たいけれど、それを両手で握り締めると、少しだけ目が開かれる。
なんとか言おうと、あ、という音のような息のような声をふせた頭で確認して、勢いよく、音をはきだした。

「 ―テ、 」

ふりきるように出した自身の声は、想像していたよりも、かすれて弱々しく、なんとも情けなかった。
もう一度、さっきよりも強く手を握って、音を発する。


「 テンテン 」


それがどれだけ通じたのかわからないが、声を発することのできない彼女は目だけで返事をする。顔が和らいだ瞬間に、すぐ苦痛の顔になり、う、といううめき声が漏れて、体をよじった。


その瞬間に、生きている彼女を実感して、じわりと目頭があつくなった。
それをみせまい、とかどんなに大切だったか理解した、とか、実は愛していた、とか
別にそんなロマンチックなことはひとつもなかったけれど、


ただ彼女をかき抱いた。


力いっぱい、力、いっぱい。


ありったけの想いを無視して。

















友達以上、恋人未満な彼ら。

2008.07〜2009.04拍手掲載