何度でも




















「 …ぇ 」

「 なんだ?聞こえなかったか? 」


突然の予想外発言にシカマルの頭は完全に思考を停止したように思えた。

「 いや、聞こえたけどよ… 」

そういって頭というより後頭部から首にかけてさする。少し困ったときにするシカマルの癖だ。
聞こえたから困ってんだろ…。

「 別に気にすることはない。知らなくて当然だ。 」

そういってテマリは再び歩き出した。シカマルは少し眉間にしわをよせながらそれに続く。
というのも、実は先程のテマリの発言が原因だ。




いつものように宿まで見送る途中のこと。
会話が途切れたとき、ふとシカマルが

「 そういやアンタは三つも年上なんだってな 」

といった。いつものなんの取り留めのない会話の一部だったので、特別な意味はなかった。
しかし、テマリは

「 ああ。それをいうならじいさんのような性格のお前が三つも年下… 」

といいかけて、思い出したのだ。

「 …違った。4つ、だな。 」

テマリの発言にシカマルは眉を寄せた。シカマルとしては自分の情報に自信があったのだ。
それに、彼女に関しての情報に間違いがあったなんてなんだか無償に嫌な気分になった。
それゆえシカマルが黙ると、テマリはそのシカマルの思考をよみとってか、ふっと笑って付け足した。

「 …今日でひとつ年をとった。 」






と、いうことなのだ。
しかも先程道ですれちがったテンテンはテマリに「ハッピーバースデー♪」といっていたのだ。
シカマルとしては、この他里の忍とは少なくとも木の葉の忍のなかでは、自分が一番親しいと、
そして彼女も自分に一番はなしてくれていると、どこかで思っていたのだ。
なんだかたまらなく、悔しい。

「 だってお前聞かなかったろ? 」とテマリは言ったが、昨日だって木の葉に来ていたのだし、教えてくれてもいいのじゃないかとも思った。



ふとテマリが立ち止まる。

いのの花屋の前。
新入荷!と手書きで書いてある札の下には小さな黄色の花。
テマリがしばし見つめていると、いのが中から出てきた。

「 かわいいでしょー?そのお花!どーぉ?テマリさん! 」

テマリは「ああ」と短く言うと、また花をみて少し悩み、顔をあげた。

「 もらおうかな、誕生日だし。 」

少し自分にご褒美。テマリがそんなことを思うのは珍しい。
木の葉の里にくるようになって、心にそんな余裕ができたのかもしれない。

「 えー!!テマリさん誕生日なのー?! 」

いのがおおげさに叫ぶ。シカマルはそのいのを見て、なんとなく安心する。
いのも知らなかった。そんな思いがした。

「 なら、シカマル買ってあげなさいよー!! 」

突然話をふられたシカマルは我にかえる。


「 いや、そんなわ… 」

「 そうだな。そうすっか。 」


テマリが断りを言い切る前にシカマルはテマリより前に出てサイフをとりだす。
あわててテマリがシカマルの肩をつかんだ。

「 おいっシカマル… 」

「 いいだろ、別に。アンタにはいつも世話になってるしな。 」

めんどくせーの一言も言わず、金を払うシカマルをいのは少し新鮮に思った。





いのから花を受け取ってまた宿への道を歩く。
手には大事そうに花をかかえているものの、テマリの顔は少し不機嫌だ。


「 本当によかったのか? 」

「 あ?いいっつってんだろ…高いもんでもないし。めんどくせー… 」

「 …そうじゃ、なくて 」


テマリが足を止めてうつむく。
シカマルはふりかえっていつもと違う様子のテマリの言葉を待った。
優しく花を撫でながら控え目に、言った。


「 …せっかくお前からもらっても…砂では花は長持ちしない… 」

言うなりテマリは少し頬を染めた。シカマルは唇に優しく笑みをのせる。


「 …そしたらまた木の葉にくればいいだろ。めんどくせーけどな。 」


その言葉にテマリは困ったように片方の眉をよせて、

「 全く、お前は… 」

それこそ、めんどくさいだろう。何日かかると思っている。
そう小言を言うかと思ったが、テマリはただ、そういって笑った。


いくらでも買ってやるさ。

だからそのたび木の葉にきて、俺に会って行け。

だからそのたびその笑顔を 俺に向けてくれ。



「 …テマリ 」

「 ん? 」

「 誕生日、おめでとう。 」


きちんと顔をみていうのは恥ずかしくて言えないと思ったのに、
いった瞬間のテマリの顔が見たくて真正面むいて言った。

自慢のポーカーフェイスが役に立つ。テマリは軽く驚いたが、すぐに、笑った。


「 …ああ、ありがとう 」


ああ、そう。

その顔が見たいから

来年も再来年も

君の方を向いて

真正面で言うよ。




…その顔だけは 俺だけのものだって、


思っててもいいよな?









「 しかし…それでなくても年の差を気にしているのに、またひとつ差ができてしまったな? 」

テマリはすぐにいつもの顔で、そういやみを言ってのけた。

俺が黙り込むとククっと笑って、俺の眉間をつついた。


「 …1ヶ月後には俺の誕生日だっての 」

「 そうか、なら早く追いつけよ?年下くん。 」


来月はキミにも言おう。

真正面を向いて。





ハッピーバースデー、

生まれてきてくれてありがとう。








































遅ればせながらお誕生日おめでとうございます。

2006.08.28