【 久しぶり 】 ネジテン
ネジが上忍に昇格した。わかってた。
ネジのことだから、きっとすぐに上忍になるんだろうな、って思ってたし。
ていうか中忍になれなかったあの試験の方がおかしかったくらいじゃない?
あの試験以来ネジは変わったと思う。うずまきナルトと戦ってから、変わった、と思う。
わかってたのに。でも、
ネジを変えるのは私でありたかった。
私には無理だった。
だからせめて私は
あなたと共に戦っていく仲間でありたかったのに、
あなたは私をおいて、どんどん先へ、行ってしまう。
「 あ、ネジお疲れ様です!任務おわったんですか? 」
「 ああ。 」
「 上忍にもなると忙しいからなー。今日は皆でのみにでも行くか、ネジ。 」
個人でスリーマンセルとは別の任務をこなしてきたネジは、いつもガイ班が使用している演習場に顔をだした。
最近任務ばかりで基礎トレーニングをしていないから、半日任務の今日のうちに少しやっておこうと思ったのだ。その前に少し休憩をしよう。暑苦しい師弟をするりとかわして、木陰に座る。
…そういえば、
「 リー。テンテンはどうした 」
「 テンテンですか?多分今日も東の森で修行してるんじゃないですかね? 」
「 東の森? 」
修行はいつもこの演習場でしていただろう。「今日も」なんていうほど東の森なんかで修行するような習慣がテンテンにあっただろうか。あったのだとしても俺はそんなことはしらない。
「 あ、ネジどちらへ? 」
「 …様子を見てくる。 」
基礎トレーニングなら私が付き合いますよ?というリーに白眼の訓練がしたいのだといってネジは東の森へ駆けた。休憩をしようと座ったばかりだというのに。さすがに任務あけの体に響く。
でも仕方がない。訓練の相手がいないのでは、仕方がないだろう。
白眼のトレーニングにはテンテンがいたほうがいい。
なぜ東の森なのだろう。西の方があの演習場からも近いし、家からも近い。
大体東の森はあまり治安がよくないだろう。国境に近いし、暗いあの森はあまり人目にもつかない。
だからこそ、実戦に近い訓練が出来るんじゃないですか?最近、テンテンやたらと闇雲に修行してるんですよね。なんか焦ってるみたいに見えますけど…。でも本人はいつもどおりだっていいますし…。
そういったリーの言葉に納得するも、テンテンが実戦を意識していたのは今に始まったことではない。
体術派であるガイ班の紅一点としてそれなりに実力は認めているし、察しのいい頭脳もへたなうるさい女よりずっといい。
確かにテンテンも小うるさい女だ。肌がどうだとか太るとか(そういいながらいつもやたらと食べている。)けれど、することはしているし、同期の中では実力はそれなりに抜けている方だ。焦るほどのこともないだろう。
とにかくも東の森に着くと、俺はすぐさまテンテンのチャクラを探りはじめた。と、ほぼ同時に
「 ネジ? 」
後ろからテンテンがズボンの裾を捲り上げた姿で現れた。その姿は任務帰りの俺よりも泥だらけで、まさしく転びました、というような感じだった。捲り上げられた左足には擦り切ったような傷跡が、足首から膝にむかって伸びていた。どうやらそれを水で洗い流してきたようで、ぬれた足にはまだ止まらない血がにじんでいた。
なにも言わずにその様子をみていた俺に、テンテンはにっこりと笑いかけた。それはそれは、嬉しそうに。
「 久しぶりね、ネジ。任務お疲れ様。 」
そういわれて俺は、久しくテンテンの顔を見ていなかったことに気がついた。上忍に昇格してからというもの、単独任務が多くて顔を合わせる暇もなかった。
−もしかしたら、
「 どうしたの、こんなところで。リーとガイ先生ならいつものトコだよ? 」
久しいテンテンの声が、顔が、すっと俺の中に入り込む。なんだかすごく、懐かしい、気がして。
「 …知っている。今行って来たところだ。 」
「 ? そうなの?ネジ珍しく汗かいてるのね。 」
汗をかくほど、俺はここにくる間走っていたのだろうか。テンテンは右手にまとめてもっていた靴を放って、かかとを踏み潰してはく。放った時に右腕にも細かな切り傷やかすり傷が、幾分沢山ついているのが見えた。
−俺はもしかしたら、
「 任務大変だったの?この先に泉があるから水あびてきたら? 」
ん?と笑いかけるテンテンの眼の下に、うっすらと薄いクマが見えて、リーが言っていた言葉を思い出す。
――焦っているみたいで
「 …何を焦っている? 」
「 ? ネジ? 」
「 焦らなくてもお前はお前だろう。 」
「 ・・・・ 」
最初はわからない、といった顔をしたテンテンが、少し驚いて俺の顔をみた。
ああ、こちらをみるとよくわかる、荒れている肌と、少し腫れた目。
きちんと目を見たのも今が初めてだ。いつもは人の目をじっとみつめるくせに今日はコレが初めて、だ。
…懐かしい。
テンテンの、俺のとは違う、その色をもつ瞳を見るのも、幾分久しいことだ。
久しぶり、ということなんていままで忘れていたというのに、こんなにも懐かしいと思うなんて。
−この目を見たかったのかもしれない。
「 …だってネジはいつも先にいっちゃうから 」
中忍になったばかりだったのに、上忍になっちゃうし、AやBなんかのランク任務も一人でこなしちゃうようになっちゃうし、どんどん、違う世界の人みたいになっていっちゃうから。
そういいながらテンテンの声はだんだん小さくなって、顔はうつむいていく。
−白眼トレーニングをしなくては、と思っていたのは
「 はやく、おいつかないと私はいらなくなっちゃうし… 」
わかってる。本当は最初っから私なんてネジには必要なんだ。私はもう大分前から、ナルトくんと戦ったときから、いらないんだ。リーは強いし、努力家で、私だって努力してるつもりだけど、そんなの全然追いつかなくて、私だけ取り残されていくようで。
「 …何を、言っている。 」
ネジは盛大にため息をついて、私に頭をポン、と手をおいた。
ああ、やっぱり。ネジの口から直接は聞きたくなかったな。いつ俺がお前を必要とした?なんてそんな
「 何のために俺がここに来たと思ってるんだ 」
クナイを私に投げて、ネジは広場の中心に立つ。そして目を閉じた。
あ…これは。
「 白眼!! 」
いつものトレーニング。
さすがね、ネジ。一本残らず叩き落してくれちゃって。だけどね、私も成長したみたい。
ネジに限りなく近い足元の一本。
「 …さすがだ、テンテン 」
その一本を引き抜いて、ネジは私に投げた。それを、未だに大事に持ってるなんて、秘密なんだけど。
ちゃんと成長してるって、思っていいのよね。ネジは慰めのために人を褒めたりするようなやつじゃないもんね。
ああ、懐かしい。久しぶりのネジとのトレーニング、ネジとの会話。ネジの、顔。
ああ、ネジが必要なのは私。いつか、ネジもこんなふうに
私を
「 …白眼のトレーニングには 」
必要としてくれたら、いいのに。
「 お前がいないと困る。 」
だから、俺が半日任務のときだけでも演習場で修行していろ、そういい残してネジは水浴びに行っちゃった。
だけど、ネジがそういいながら最後に小声で「あまり無理はするな」っていってくれて
ああ、ホント、
あたしはネジが好きだな。
−久しい、この目を見たかったから…なのかもしれない。
以前、拍手で「上忍昇格後のネジテンがみたいです」って
言って下さった方がいらっしゃったので、書いてみました。
むずかしいですね。無意識にテンテンに会いたがるネジ、という隠れテーマです。笑
2006.11.26 ![]()