変わらない変化。        一万打企画:狸。様リクエスト















「 シカマル 」

見慣れた黒髪を街中で見かけた。もう10年以上一緒にいる親友。
ゆっくりとめんどくさそうに振り向いた猫背が、妙に大人びて見えるのは、つい最近から。

「 チョウジ、いの 」

「 これから任務? 」

「 ああ、砂の使者さんが来るんでな 」

ああ、なるほど。それで

「 使者ってテマリさん? 」

「 そう 」

めんどくせーなんて付け足しながら、ポーカーフェイスのはずの、いつもと変わらないはずの彼の顔が、嬉しそうだ。
「遅れると怒るんだわ」といいながら先を急ごうとする彼の背中を、いのがバシンとたたく。

「 んもう、本当にラブラブねー! 」

「 誰がだよ 」

「 テマリさんとアンタに決まってんじゃない!誰がみてもラブラブよー! 」

というと、

「 …そうか?めんどくせー… 」

と頭をかいた。特に照れる様子もなく、そういわれたことを心底いぶかしみながら、眉間に皺を寄せた。
そしてそのまま、くるりと元の方向をむいて「そんじゃ」と歩き出す。
そのまま親友の猫背の背中を見送っていると、いのが「ふうー」ひとつ、長いため息をついた。

「 自覚ないのかしらね、シカマル。 」

「 うーん…テマリさんもだけどね。見たらすぐわかるのにね。 」

「 頭いい割に、意外と鈍いとこあるのよねー、2人とも。 」

いのはまたひとつ、ため息をついた。

こんな光景が、当たり前になればいい、と。

猫背が珍しくちょっと早足になっているのをみながら、そう思って、がるBを口へ放りこんだ。
少しスパイスの効いた塩っぽい味が口に広がって、でもその後に残るほのかな芋の甘みと旨さが、
まるで彼らみたいだと、ちょっとだけ思ってしまった。












「 悪ィ、遅れた 」

「 遅い。改善する気がないんだろう。 」

門前で腕を組み、仁王立ちしていたテマリは、シカマルを確認するなりさっさと歩き出す。

「 ちょ、待て。遅れたっつっても火影様んとこいくにはまだ時間あっから。こっち。 」

いやに早足の彼女を引き止めて、いつもと違う道を進み始めたシカマルに、テマリは意味がわからないままついていった。


こいつの行動は全く意味がわからない時がある。
頭のいい奴は良くわからないとはいうけれど、まさにそんな感じだ。
いつも何か考えていないようで、すべてが計算されているようにも思う。

けれど、そういう奴に思うとおりに動かされるのはなんだか癪だから。


「 ! な、なんだよ、急に 」

「 別に。いいだろ、手くらい。何、コレくらいで驚いたのか? 」

突然後ろから手を握ってみると、シカマルは驚いて手を引いた。
こんな顔は、なかなかみれない。してやったりな気分だ。
それでも逃がさず捕まえると、そのままゆっくり下へおろして、
握り返してきた。

「 −って、 」

と思ったらそのままぐいっとひかれて、前のめりになった体制を立て直そうとすると、
何を思ったのか、奴は突然私を抱えたままその場に仰向けに横たえた。
つまりは私は奴の上に乗っている状態で。
目の前は奴の中忍ベストのポケットで

「 何、する 」

「 いーから。ちょっと目、つむってみ。 」

背中が押さえられているから、うまく、動け ない。
言われるがままに目を閉じると、世界は暗闇に支配される。

闇の私は知らぬ私。
闇の私は忍の私。
闇の私は、奴とはつながれぬ、私。

なのにすぐそばで奴の鼓動が聞こえる。
少し早いと思われる奴の鼓動と、闇。
つながらぬはずの二つが、同時に私の中で絡みあう。

「 …いつまで 」

人が来る、そういおうとしたら私を乗せたまま、シカマルは急に上体を起こした。

「 さっきいのに、俺たちはラブラブだって言われた。 」

「 …は? 」

突然何を言い出すのかと思ったら。
思わず奴の手が添えられたままの頭をぐっと上げて、奴の顔をみる。

「 手、握るだけでこんなに脈はやくなってんのに

 どのへんが”ラブラブ”なんだか、わかんねーな、と思ってよー。 」


確かに。
そもそも、人がいるところではもちろんのこと、いないところでもこんなふうに密着することなんて、滅多にない。
確かに恋人という関係ではあるけれども、以前と特別変わったことなんて、任務後に必ず団子屋に行って、
その後シカマルの昼寝に付き合うという習慣がついたこと以外に、ないはずだ。

未だにお互いを名前で呼ぶこともあまりないし、会うのはやはり任務で木の葉に出入りしているときだけ。
けれども、恋人だと宣言したわけでもないのに、いつの間にか木の葉の里では私たちが付き合い始めたことが広がっていて、
我愛羅にまで電報が届いて、直接風影室に呼び出されて確認をとられたくらいだった。

頭がそんなことを考えていたから、次の奴のセリフの意味を、一瞬とりそこねた。


「 …だから、ラブラブ、っぽい行動とってみたんスけど。 」


理解した途端に、なんだか急に自分の頬があつくなるのを感じた。
よくよく考えれば、こんなのは初めてだ。今 私はちょうど、シカマルの足の間、胸の中に座っている状態だ。
ラブラブ?これが?今、ラブラブなのか?なんてことだ。

思えば思うほど、離れなくては、と思うのに、顔があつくなって
絶対見せられないような色になっていると、
何だかじっとり汗なんかもかいてきたかもしれない。
そういえば、シカマルからは少しだけ汗の香りがする。決して不快なものではないけれど。
…私はにおったりしないだろうか。あ、髪が遠路で痛んではいないだろうか。
しかし、ともかく。

ゆっくりとシカマルの中忍ベストを握る。シカマルがピクリと反応した。
奴の体が少し硬直したのがわかった。そうすると、私の体も少しだけ硬直した。
けれど、ゆっくりと頭をふせて、絶対に奴からは顔が見えないようにした。
今私は最上級に顔が赤いに違いない。


「 …悪く、ないな 」

「 …あー…。 」


あいまいに言葉をにごすと、シカマルは上を見上げて手で目を隠した。


「 また照れたのか?ガキだな。 」

「 うっせ 」


別に無理やり変わるつもりはないけれど。

すこしだけ、桜色に染まった、奴の頬をみて、たまにはこういうのもいいんじゃないかと思った。

もう一度奴の胸に頬をあててみると、また奴の心音のペースがあがった。


「 …これ以上ペース上がると寿命縮まりそう何スけど 」

「 そうか。でも、まぁ平気だよ 」

「 ? 何で 」

「 私も

  同じくらい、速いから 」


縮まるなら、きっと同じ時間分だ。

闇は交わらない
闇では奴は絡まない

けれどこの先どこかで孤独に闇にくるまれたとしても

きっと思い出して、眠れるだろう。
少しだけはやい、奴の心音を子守唄に。












「 あら、シカマル、テマリさん! 」

「 山中、秋道 」

「 またお前らかよ… 」

火影室からの帰り道らしき2人とまた遭遇した。いのは大きく手をふって、シカマルは大きくため息をつく。
数年前から見慣れたこの道とこの2人の間の空間は、変わっていないけれども

「 またとは何よー、邪魔して悪かったわねー! 」

「 あー、めんどくせー 」

「 おい、シカマル。団子屋が閉まる。 」

「 へいへい…じゃあな 」

「 またな、2人とも 」


確かに、端的な会話で、近くない距離だけど、


「 あーあ、本当、ラブラブなんだから 」


いのがそうため息をつくくらいには、変わった。
数メートル前を行く2人の話し声も、顔も、柔らかくて、どこか暖かくて


「 そうだね 」


テマリさんといる時のシカマルの影はいつもより柔らかい。
気がこもってない、普通の影で。

テマリさんの目は、シカマルといるようになってから前よりずっと、暖かくて
どこかに安堵感があらわれていて。

お互いがお互いだけにむけている姿が、どうにもわかりやすくて
僕らのしらない彼がいて、僕らのしらない彼女がいるのは、
僕らのしらない彼がいて、僕らのしらない彼女がいるときだけで。

みないふりをして

2人の変化を

気づかないふりをして

2人の想いを

ただ、この光景が当たり前であればいいと

そう、願った。













狸。様、企画に参加ありがとうございました。シカテマ、恋人なりたてです。
信じられないくらい遅くなってしまって、しかも未だに納得いかなくて、もし調子が戻ったら書き直したいくらいの出来で…本当に申し訳ありません。
実は狸。様のリクエストは今回の企画の中で一番悩ませていただきました!笑。
その割には結局なんだかリクエストとは違った感じのものができてしまいましたが…すみません…。
人の求めるものをえがくのは難しいものなんだと、心底勉強になりました。ありがとうございました!

2007.04.02