マイナスプラス        一万打企画:蓮月様リクエスト














「 リー、ネジ!はやくー! 」


ガイ班での久々の任務、大名の護衛。3日目の今日は、ガイが「三人とも!見回りついでに青春だ!」と言って休憩をくれた。
その間一人で護衛をしていてくれるとのことだ。本来なら順番に休憩を取るべきだが、久しぶりにそろった三人を一緒に、という余計なお世話というか、暑苦しいような、まあ有難い気をきかせてくれたようだ。
テンテンはガイに、休憩は交代にすべきだと訴えたが、暑苦しい顔で青春、を連呼されたのであきらめたようだ。
三人は3日分の疲れを癒しにちかくの湖へとむかう。依頼主の大名が近々買う予定だという土地にある湖は、それはそれは美しい水で、飲んでもおいしいのだとか。

あきらめてから、妙に楽しそうにテンテンは湖へと急く。
せかさなくても湖は逃げないですよ、というリーに、はやく行って出来るだけ長くゆっくりしたいじゃない!久しぶりだし!といって嬉しそうに笑った。

ネジが上忍になってから、この班での任務は極端に減った。まあ、ネジがいないだけで、テンテンとリーはほとんどガイの部下として動くことが多かったが。
だから、ネジと会うのは久しぶりだ。まだ班員ではあるが、こうして長い時間一緒に行動するのは数ヶ月ぶりで、相変わらず無表情のネジだけど、ちょっと場数をふんで大人になったみたいで、ドキリとする。
小走りになったり、歩いたり、リーとネジより少し前をいくテンテンは、とても楽しそうに笑っていた。

「 テンテン嬉しそうですねー 」

「 そうか? 」

「 ええ、ネジがいるからでしょうね 」

「 ・・・ 」

「 いつもは任務を確実に正確に終わらすことだけを考えてますもんね 」

いつも、という言葉が妙に耳に残った。俺は今の「いつものテンテン」を、知らない。
俺がいるから嬉しい、それはチームメートがそろったから嬉しい、ということであって。
リーはいつもテンテンと任務を共にしている。テンテンはいつもリーと任務を共にしている。

「 はやく行こうよ! 」

いつの間にか目の前に戻ってきたテンテンはリーの手を握って走り出す。
リーはふいに引っ張られたので、つんのめって「待ってください、テンテン!」といって一緒に走り出す。

「 …うかれるな。任務中だぞ。 」

「 なによ、機嫌悪いのね、ネジ 」

「 そんなことはない。休憩中とはいえ任務中だ。油断は任務に支障をきたす。 」

「 それはそう、だけど…ちょっとくらい… 」

「 自覚が足りないんじゃないのか 」

ついきつい言葉がでる。自分の眉間に皺が寄っているのがわかる。
無性にイライラする。つながれた手が、俺の入る隙間の無いくらい密着している。

「 まあまあ、休憩もとらないと注意力散漫になりますから 」

「 そーよねえ!ふーんだ。先いっちゃうから! 」

パシっとリーの手を離してテンテンは少しはやく歩いていく。
立ち止まっているネジとテンテンを交互に見ながらリーは少し困ったように笑った。 

…なんでリーがテンテンに加担したのが気に食わないのか。そんなことは昔からそうなのに。昔から。
なのにここ1年の俺のいないガイ班が、変に気に入らなくて。


リーは少し迷って、ネジの隣に立った。そして口をゆっくり開く。テンテンも、素直に言えばいいのに。


「 湖のそばに、薬草が生えているらしいんですよ。 」


ピクリ、とネジが反応した。僕は、気づかなかった。友人の異変に気づいたのは彼女だけ。

「 昨日しびれ薬をうけたんでしょう?夜に左手を気にしていた、と言っていましたよ。 」

「 …テンテンがいっていたのか? 」

「 そうですよ。他に誰がいるんですか? 」

ネジを、心配しているんだって。素直にいえばいいのに。

そういうと、リーはにっこりと笑った。その笑みにはテンテンは君を見ているんですよ、という意味をこめて。
僕の友人兼ライバルは、天才のくせに鈍感で、人より自分の感情に一番うとい人なんです。

「 はぁー…全く。 」

ネジは再び歩き出した。そのペースはさっきよりも、はやい。
そして次第にゆっくり歩き出したテンテンの背中に近づいて、こしていく。

「 あ、ちょっと!おいてくつもり?! 」

そのテンテンの声を聞くなり、ネジは木に飛び移って走り出した。その後をリーもあわてて追う。

「 や、やだ!待ってよー!迷子になっちゃうじゃない! 」

( 大丈夫ですよ )

前を走るネジを見つめながらリーはくすりと笑う。
ネジはこういうときは絶対白眼を発動しているんです。ちゃんとテンテンとの距離を計算しながらスピードを調節してるんですよ。
しかも、それが僕にはわからないように僕よりは早く走っている。
でも、昔からそういうところは変わらないから、僕はわざとこういうときは後ろを走るんです。

「 何がおかしい? 」

「 いえ、別に 」

不機嫌そうにふりかえった顔はいちいち白眼の発動を隠していて、それを知られたくない彼の意思を悟って僕も知らないフリをします。
テンテンは知らないんでしょうね。こういうネジを。

後ろからテンテンの息が上がってきた声がします。結構スピードでてますからね。
じゃ、そろそろ行きますか。

「 大丈夫ですか、テンテン。少し休みましょう。 」

「 リー、うん。ありがと 」

ほら。止まった。
テンテンを枝で止まらせて、僕がそばによると、ネジが止まる気配がしました。さて、そろそろ戻ってくるんじゃないでしょうか。

「 もうつくぞ。 」

ほらね。しゃがみこんでいたテンテンの腕を引き上げて、立たせる。えー、もうちょっと休ませて。というテンテンをちら見して走り出すと、文句を言いつつもテンテンも後を追う。ネジは今はもちろん、ゆっくり走ります。また僕と2人で休憩するとイヤだから。
これが、僕らのスタイル。

ほんと、素直じゃないんですから。2人とも。






「 わ、キレー!! 」

湖をみるなり、テンテンは靴を脱いで走りこむ。つめたい、といって笑う彼女を見る友人の目は、すごく優しくて。
これがホントにあのネジなのかと思うくらい優しい目で。

「 あ、そだ! 」

テンテンはきょろきょろし始めると、水際に生えていた薬草をとって、石ですりつぶし始めた。
それを見ていたネジはどこか落ち着かなくて、だから僕は2人が素直になれるように、ひとりで蟹と格闘を始めて夢中になったふりをするのです。

「 はい、ネジ。左腕だして 」

「 …なぜわかったんだ、 」

「 ? だって気にしてたじゃない? 」

隠していたつもりだったんだ。誰にも気づかれないように。ガイにだってリーにだって気づかれなかったのに。
何でお前はわかってしまう。一番、隠していたい人なのに。


「 …隠さなくて、いいよ 」


小さな切り傷に薬草を塗りながら、テンテンは小さく言った。決して俺のほうはみないで、独り言のように。
ちり、としみるのは腕なのか、はたまたどこか違うところが何かを訴えているかのような。


「 私が、みてるからね 」


少し照れくさそうに笑ったテンテンは、少しだけ頬を染めて、俺をみた。俺は、彼女をみた。
彼女は恥ずかしそうに目をそらして、傷口を見つめた。そして小さくキスをする。
ちりちり、と何かがやきつくような衝動が押し上げてくる。ちり、ちり、と。


「 は、はやくよくなるおまじないだから! 」


ばっとすばやく俺から遠のいて、彼女は湖へと逃げた。透き通った水がはじいて、彼女を包み込む。
それはキラキラと反射して、まるで鏡のように光を反射して、まぶしくてまぶしくて見ていられなくて。

段々と遠くへ行ってしまう。
まぶしくて目が開けてられない。俺が気づかぬうちに彼女は膝までつかるほど遠くにいってしまった。

俺は思わず、靴も脱がずに駆け込んで。

綺麗な透き通った水を、ばしゃばしゃと乱暴にかき乱して、少し泥色に変えながら
それでも彼女にむかっていって、強く腕を引いた。それ以上、いくな。それ以上、遠くへ

思わずそのまま倒れこみ、俺たちはしりもちをついた。
もちろん膝まである深さなので、ばっしゃ、と頭からずぶ濡れになった。
後ろに倒れ、そのまま腰をついた俺に、かぶさるように、テンテンがいた。
驚いたリーがこちらをみたような気がしたけれど、俺はもう止まらなかった。





突然腕をひかれて、驚いて倒れこんで、顔の目の前にネジの胸板があって、気がついたらそのまま顔を押し付けられてて、
…つまりは、ネジに抱きしめ、られてて。
蟹と格闘してたリーがこっちをみていた気がしたけれど、そんなことも頭がまわらなくて、そしたらネジが


「 俺も、お前を見ている。だから 」


そのままネジが続けた言葉で、かぁーって顔が真っ赤になるのがわかって
私は小さくうなづくのが精一杯だった。

少し離れてみたネジの顔は、水でぬれて、いつもにまして綺麗で。
でも、ネジの顔もすこし赤くなっているのがわかって、思わず嬉しくなって、笑ってしまった。





「 俺以外を、みるな 」


確かに友人はそういいました。ああ、珍しく素直になれたんですね。
綺麗な水のおかげでしょうか。それとも彼女の笑顔のおかげでしょうか。

確かにそのときのテンテンは、今まで見た中で一番可愛らしく笑っていました。
今はネジよりテンテンと一緒にいる時間が長いはずの僕でもみたことのない笑顔でした。
それはきっと、ネジにしか引き出すことの出来ない最高の、彼女の素直な姿なんでしょうね。

そのあとの2人はさすがに盗み見はやめました。次第に彼らの顔が、距離が、縮まっていくのがわかったので。
…友人の、友人たちの恋路を邪魔はしたくないですからね。
僕はゆっくり後ろを向いて、蟹をそのまま置きました。小さな小さな蟹が、ふたつならんで帰っていきます。

素直じゃない僕の友人たちは、マイナスと、マイナスで、プラスになるみたいです。












蓮月様、企画に参加ありがとうございました。ネジ→←テンです。
一人称がころころ変わって読みにくくてすみません;リー君楽しかったです。
私もこういう手助けキャラ[?]好きなのでとても楽しかったです。というか、ネジテンは「ガイ班」でのネジテンが好きです。
自分の中では結構甘めのつもりだったのですが、読み返すとあまり甘くないですね…。
すみません!でもネジテン大好きなので、リクしてくださって本当に嬉しかったです。
ありがとうございました!

2007.01.21  

最後の「マイナス:素直じゃないネジ+マイナス:素直じゃないテンテン=プラス:素直な2人」の
意味に気づいてくださった方いらっしゃいまでしょうか…説明不足かと思って後書きに追記してみました。(01.27)