赤色指輪        一万打企画:イチ様リクエスト














**side sikamaru


「 ねぇ、シカマルどう思う? 」

ふと別任務をこなしていたチョウジと久しぶりに三人そろって食事に行くために、いのと待ち合わせ場所に向かっているところだった。
俺はなんとなくぼー、っとしていて。隣でなんか言ってるいのの言葉を半分以上聞き流しながら、空を見上げていた。
雲が空の高いところで流れていくのが見えて、ああ、明日は雨かもしれない。そんなことを思ってた。

「 あ? 」

「 もー、聞いてなかったのねー!! 」

いのはわかりやすく、怒ってます、といったようにぷう、と口を膨らませて顔を赤くして声を高く上げた。
いのの話を聞いてないなんていつものことだから、少しだけ真剣な目の色を含んだその顔は、きっと何か大事な話でもしてたんだろう。
「悪い、」というと「仕方ないわねー」といいながらいのはもう一度話し始める。

「 チョウジよ、チョウジ!ほら、そろそろ私たち付き合って長くなるじゃない?

  だけど、その、ほらー… 」

「 …んだよ? 」

「 もー、わかんないかなー!! 」

すこしばかりさっきとは違う意味で顔を赤くして、いのは左手の薬指を示した。そこには別に意味も無く、白いいのの指があるだけ。

「 …だから? 」

「 もー、シカマルはそんなんだから女にもてないのよー!!

  指輪よ!指輪!!そろそろくれてもいいと思わない?! 」


あ。左手の薬指。
それは婚約の証、夫婦の証。そして、彼は私のもの、私は彼のもの、そういう主張。
指輪、か。


「 女に指輪をおくるのは独占欲のあらわれ、っていうじゃない?

  …だから、その、チョウジは別に私が誰と何してようがどうでもいいのかな、なんて…ちょっと思って、さ… 」

「 …んなことねーよ。 」

現にほら、遠くで俺らをみつけたチョウジが珍しく急いで近寄ってくるのがみえるだろ。
チョウジはよく言ってた。シカマルはいいよね、いのと仲良くて、いのに相談とかしてもらえて、いのに…
いつもいのの話を、必ず、してた。あいつはずっと、ずっと昔から


「 いの、シカマル!遅かったね〜僕もうお腹すいちゃったよ〜 」

さりげなく俺といのの間に入るなんてのは、チョウジの嫉妬のあらわれだろ?
嫉妬っていうよりは羨ましがる、って感情に近かったけどな、昔のチョウジは。

「 チョウジ!それ以上太ったら別れるって言ってんでしょー!! 」

嘘こけ。さっきまであんな不安そうな顔してチョウジチョウジ、って言ってたくせに。

「 ええ、そんなー…いのー。 」

ふくれて前をいくいのを追いかけて、チョウジも少し前へいく。俺はその姿を目で追いつつも、ペースを変えずに後をおう。
めんどくせー、奴ら。俺の、親友。

いつの間にか暮れてきた空がオレンジ色にそまって、ふいにふりかえると、そこは目が開けてられないほどの赤い太陽で。
ああ、これを夕日と呼ぶ。そんな景色を見た。



 ― 空はいつも名前を変える ―



突然、女の言葉を思い出した。思い出したというよりは、目の前に現れた、とでもいうように本当に突然。
夕日なんていつもみていたというのに、



 ― でもな、名前を変えていても、空は空だろう? ―



ああ、そういって女が笑った。最後にみたあの日のように、寂しそうに、笑った。そうか、丁度この角度、この道、この時間、あの時と全く一緒だ。
全然気づきもしなかった。すべてが同じ、そういえばあの時も今日みたいに空が高くて、なのにすこし湿った空気で。

ああ、何もかも一緒なのに、全く、一緒なのに。

違うのは女がいないことだけ。



「 シカマルー? 」

いのに呼ばれて、俺は我に帰る。呼ばれたことで、記憶はそこで途切れてしまって、
その後女がなんて言っていたかが、思い、だせなくなって

少し、惜しい気持ちが残る。


「 どうしたのよ? 」

さっきよりも近い位置でしたいのの声に、俺はしぶしぶ体を向ける。

背中にあたる夕日の熱がじりじり、と痛くて
またふりかえりたく なってしまった。


「 シカマル、みてー 」

ご機嫌ないのがみせたのは左手の、薬指。

「 チョウジがね、くれたの。ちょっと早いけど、付き合って5年記念だってv 」

にっこりと笑ったいのは、キラリとそれを輝かす。
輝く指輪の光は夕日を反射していた。


「 …そうか、そんなにたつんだな 」

「 ? うん 」



俺はもう、後ろを振り返らないように生きていくしかないんだ。

夕日の熱は焼きつくように俺の中に溶け込んでいった。

















**side temari


「 テマリ、どうしたじゃん 」

「 あ、いや。なんでもない。 」

カンクロウとツーマンセル任務後だった。ちょうど抜け忍をおいつめて、始末し終わったところだった。
そいつの息がとまったことを確かめて、立ち上がったとき、ふと気づいた空の赤色。
あまりにも、それの熱がじりりと熱くて、思わずそのまま見つめていた。

「 珍しいじゃん、任務内容は終了したとはいえ、よそ見するなんて 」

「 …そうだな 」

未だしゃがんだまま、抜け忍をどう運ぼうか考えている弟の、頬の返り血が妙に目についた。
そのまま自分の手にも同じ色を見つける。きっと、私の顔にも同じ色が見える。

でもこの空は隠してくれるかもしれない。
この太陽なら、この色を隠してくれるかもしれない。

そう思ったことがあったな、確か。



 ― んなこと考えんなよ、めんどくせーな ―



そういって笑ったあいつに、心から恋をしていた、あの頃に。
キラリと光った、左手にべったりと染み付いた赤色の、まだ生暖かいところが
まるで指輪でもはめているかのように見えて。


空はいつも名前を変える。
でも、名前を変えても空は空だ。

いつも、どこでも私を見ている。空は私を、知っている。

だから、怖い。私のすべてが、空から、いつも空をみているお前に、
伝わって しまい、そう で。

すべてが、伝わってしまい、そうで。

この空のように赤色で染まっている私も、
夜空のように闇に隠れた私も、
嵐空のように黒い感情をもった私も、
すみきった春の空のようにお前に恋する私も、
雨の空のように泣きたくてなきたくて仕方ない私も、
しとしと降り止まない雪空のように、お前を好きで好きで好きで好きで仕方ない気持ちが積もっていく私、も

流れていく雲にのせてお前に伝わってしまいそうで。


怖かった。



必要ないと、告げられるのが怖くて
さよならと、告げられるのが怖くて
離れていくのが、怖くて
嫌われるのが、怖くて
私のすべてを知られるのが、怖くて
自分から離れた。


弱かった、私。 いや、弱い 私。



「 テマリ?そろそろ帰るじゃん? 」

「 …ああ 」


カンクロウがそういって歩き出した気配がしても、私は赤色から目がはなせなかった。
赤色をみたまま、動けなかった。
長く伸びた影が、お前につながっているわけでもないのに。

少しずつ乾いていく赤色が、私の指を引きつらせて、指が動かなくなっていく。
空の赤色が消えていくその色と同じに、私の左手も茶色く変色していく。
乾いた赤色が、光ることは、もうない。

乾いた赤色は、ぱりぱりとはがれて落ちた。


シカマル。お前がくれた指輪をはめていられたら、この指は今でも光り輝いていたのだろうか。


この空を越えて、あいつに、伝わればいいと思った。

この高い雲のように、届かない切ない想いが

伝わってしまえば、いいと思った。

















**5years ago



「 それは、受け取れないんだ 」

すまないと言って笑った女は今にも泣き出しそうで

「 …なんで 」

なのに気の利いた言葉も思いつかずに男はただそう、吐き出して

「 …ごめんな 」

「 …理由を聞いてんだけど 」

「 、ごめん、な。 」


女はただそれだけを繰り返した。
自分と男はつりあわないとか、つりあえないとか、もはやそんな理由でもなくて


 お前を汚したくないから、なんていうのは単なる偽善で
 私を知られたくない。お前だから、知られたくない。
 お前の知らない私は、おそろしく醜い。

 お前とならどこまでも穢れてしまってもかまわない、というのは単なる口実で
 お前のことならどこまででも、どこまででも、知り尽くしたくて。
 たとえそこに俺の知らないお前がいても。


男と女の気持ちは、まるで磁気が反発しあうかのように、相容れなくて


 女は男がいとしいから、愛しているから離れるという。
 男は女が愛おしいから、愛しているからそばにいたい。


女が受け取らずに残していった指輪だけが、男の手のひらにいつまでも、いつまでも残っていた。


 女がはなした愛情と
 男がもとめた愛情は


どうしてひとつに

なれない のか












イチ様、企画に参加ありがとうございました。シカテマ破局後+イノチョです。
実は、今日同時に更新したnovelの「きっと君は幸せに」をこのリクエスト用にかいていたのですが、
もう少し軽い感じがいいかな、と思い書き直しました。シカマルサイドは当初の書き直し理由のように軽くなったのですが、
テマリサイドが重くなってしまいました…。どうしてもテマリ目線にすると、重シリアスしか書けないみたいです。
最後の五年前は載せるかどうか迷ったのですが、ちょっと上二つだけでは説明不足かと思い、載せてみました。
ちなみにシカマルがテマリにあげようとした指輪は別に婚約指輪とかではないです。プロポーズとかでもないです。ただ、指輪をあげようとしただけ。
先に書いたのは「きっと君は幸せに」の方ですが、これの続きとしても読める感じです。
シカテマ破局は書きたくないな、と思っていましたが、2人にとってはあり得ることなので、書き始めるとすらすらといい具合に書きあがりました。
書きたくないといった割には、リクの中で一番最初にネタを思いついたものでした。笑
しかも書き終えると、こういうのも、すごくリアルでいいかもしれないと思ってしまいました。リクをいただかなかったら気づかなかったと思います。
ありがとうございました!

2007.01.27